中国ブランドには、何が足りないのか?

「カンヌ」グランプリ作品に見るブランド戦略

ブランドをブランドたらしめる「志」の高さ

たとえば、世界中で洗剤やパーソナルケア商品を売りまくっているP&Gは典型的なマーケティング主導の企業であり、商品の開発・販売を通した商品ブランディングには積極的でしたが、かつては企業ブランドにはさほど投資していませんでした。しかし、消費者や社会の目が商品の背後に存在する企業の意志や事業目的を鋭く見透かすようになり、またソーシャルメディアによってよい情報も悪い情報も瞬く間に社会で共有される時代に入って、P&Gも企業の価値観や人間味の伝達に力を入れるようになりました。

その具体例が、2012年ロンドンオリンピックに合わせてオンエアされたテレビCM「Thank You Mom」です。家事をこなしながら子育てをし、水泳や体操や陸上などのスポーツに励むわが子を懸命に支え応援する母親の姿と、成長してオリンピックで活躍する子どもの雄姿を描いたこのフィルムは、Youtubeで1700万回以上再生されました。P&Gは「世界でいちばんハードな仕事」に従事する世界中の母親をサポートするために、「ママの公式スポンサー」として家事に役立つよい製品を提供する企業です、というブランドメッセージが伝わってきます。

企業だけでなく、企業が産み出す商品やサービスに対しても志と哲学が問われます。まず、事業を立ち上げる時点で、その目標や将来像が定まっていなければなりません。ただ漠然と儲かれば何でもいいという発想で始める事業はブランドへの道を外れています。何のためにその事業をやるのか、何を達成したいのか、究極の目的は何なのか、その企業や事業は世の中のためになる存在なのか、自らの志を明らかにしておく必要があります。

中国では食品の安全性に関するスキャンダルが頻発しています。たとえば乳幼児向けの粉ミルクは国産ブランド製品の品質問題が発覚した後、多くの消費者が海外製品を買うようになっていました。ところが、今月に入って、ニュージーランドのFonterra社が乳業メーカーに卸していた原料に安全性問題が発覚し、中国の消費者は一体誰を信じればいいのか途方に暮れている状態です。

社会と共振するブランドメッセージを

私たち広告人にとって、「カンヌ」で賞を獲ることは大きな成功のシンボルです。長らく「カンヌ国際広告祭」の名称で、広告クリエーティブ・コンテストの頂上イベントとして君臨してきたこのフェスティバルは、2011年に「広告」の看板を外して、「カンヌライオンズ・国際クリエイティビティ・フェスティバル」とタイトルを改めました。

インターネットやモバイルメディアの発展とマーケティング手法の進化に伴って、ここ10年ほどで広告クリエーティブは劇的に変化しました。最新のキャンペーンを正しく評価するために、テレビ・コマーシャルやグラフィックスといった伝統的メディアごとに賞を出すのではなく、オンラインとオフラインのクロスメディアで展開される広告や、直接商品を売るための手段ではない社会貢献プロジェクトなどを積極的に評価するための改革です。

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