日本人の多くが考えていない有事の資産防衛 北朝鮮危機で起こる最悪事態を想定してみる

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しかし、現在この「有事の金買い」が通用するかといえば、近年の戦争や紛争時の金価格の推移を見ると、大して関連性がないことがわかる。その背景には、米国の軍事力が強大になりすぎたこと、そして被害が大きすぎて使えなくなった大量破壊兵器などの浸透によって、簡単に勝敗がわかる戦争ごときでは金価格は動かなくなった、と言って良いかもしれない。

実際に、米国同時多発テロ事件や米軍がイラク侵攻したイラク戦争では、瞬間的に金は買われたものの、金を手放す投資家も大量に現れて、有事=金価格の高騰、という図式は真実味がなくなってきている。

むしろ、金価格が大きく動いたのは2008年のリーマンショック時だった。100年に1度の恐慌といわれたリーマンショックでは、金価格まで下落。その後になって、米ドル下落、金価格高騰となった。

金価格には国際価格と国内価格がある。ドル安円高になると金の国内価格は下落するのだが、リーマンショック時には国際価格を追いかける形で国内価格も上昇してきた。

簡単に言うと、戦争のような有事では金価格は動かないが、金融危機に対しては効果的と考えていいのかもしれない。金が有事に強いのは、あくまでも社会インフラがガタガタになって、食料品や武器と交換できるのが現金や金ぐらいしかなくなるような状況の時であり、物流が高度に発達し、機能している社会では資産防衛として役立つかどうかわからない。

そもそも金は、保有しているだけでは1円も利息が付かない。ただし、金は今も昔も一定の価値を持つ「貨幣」であり、紙幣と違って紙くずにはならない。ハイパーインフレのような事態には強い。

国債市場が暴落する事態も頭に入れておくべき

今回の北朝鮮をめぐる地政学リスクで考えたいことは、日本本土に対して攻撃があるかどうかが大きな問題だ。北朝鮮の軍事力は、すでに米国と対等に戦えるほど成長しているという意見もあれば、瞬時に終結するという考えもある。

日本は、第2次大戦で敗戦した時に、物価が500倍に跳ね上がるハイパーインフレを経験しているが、その際には預金封鎖も実施された。

今回の北朝鮮にまつわる地政学リスクから、いきなり預金封鎖というシナリオはありえないだろうが、万一北朝鮮からのミサイルが日本本土を直撃した時には、円や株式、国債市場が暴落する事態も念頭に入れておくべきだろう。

そのためには、やはり5%程度、最大限でも10%程度の資産は「いざという時のための金投資」が必要なのかもしれない。

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