「レクサスLC」1000万円超クーペの明確な個性 ベンツやBMWなどの欧州勢とは明らかに違う

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パワーユニットの素直な性格などに日本らしさを感じる

公道で試せる速度域では、レクサスLCは走りの面でも国際水準に達していると思った。そのうえで良好な視界やパワーユニットの素直な性格などに日本らしさを感じた。試乗後にある開発スタッフから、「ジャーマンスリー(メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ)に追いついたかと思っています」という言葉が聞かれたのは、ちょっと残念だった。

クーペはセダンに比べてデザインやエンジニアリングの自由度がはるかに高い。そこにブランド独自の付加価値を盛り込み、イメージリーダーを務めるための車種でもある。そのイメージはブランドごとに違っていて当然である。

これが日本のラグジュアリークーペ

筆者はかつて「マセラティ3200GT」というクーペを所有していたことがある。

カーデザイン界の第一人者ジョルジェット・ジウジアーロが描いたスタイリングは流麗、本革をふんだんに使ったインテリアは華麗でありながら、3.2リッターV8ツインターボエンジンがもたらす加速は凶暴と呼べるレベルで、街中を流すだけでも神経を使った。でも、乗り込んでいくにつれ、血の通ったハンドリングの持ち主であることを知った。

ドイツ車や英国車とはまるで違う世界観の持ち主であり、それを誇りにしているようだった。イタリアのラグジュアリークーペはこうあるべき、というメッセージが伝わってきた。その点からもクーペにはナンバーワンではなくオンリーワンが望ましいと考えている。

鉄道の世界では今年、JR東日本とJR西日本が豪華寝台列車の運行を始める。信頼性や正確性を武器にしてきた日本のモビリティが、この国ならではの付加価値を表現しはじめた。レクサスLCもその代表だと思っている。これが「日本のラグジュアリークーペ」であると、自信を持って言える1台だ。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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