もしアマゾンが本気で「金融事業」を始めたら

銀行にとって大きな脅威となりうる

土壌は整っているのです(撮影:尾形 文繁)

銀行の個人向け無担保カードローンが、社会問題になっている。消費者金融では規制されている「年収の3分の1」を超える貸し付けを行っている銀行が多数に上り、過剰な融資の結果、自己破産の増加などにつながっている。消費者金融会社を傘下に持つメガバンクだけでなく、ほかの都市銀行や地方銀行もこの分野に続々と参入してきているのが実情だ。

これには、マイナス金利の影響で、本業である法人向けの貸し出しや、個人向け住宅ローンなどの事業環境が厳しくなっているという背景がある。そうした環境の中で、金利が高く設定できて収益性の高い「個人向けカードローン」の分野に多くの銀行が殺到し、激しく競争しているのだ。

日本では、「三菱東京UFJ」「三井住友」「みずほ」の3大メガバンクのほか、信託銀行や地銀も含めると約140もの銀行がひしめいている。しかし、これからの銀行の競争相手は、こうした同業の銀行だけではない。金融(ファイナンス)と技術(テクノロジー)を掛け合わせた造語である「フィンテック」という言葉を見るたびに、むしろ銀行ではない異業種の会社をイメージする方も多いのではないだろうか。

銀行にとって脅威となりうる会社

拙著『銀行はこれからどうなるのか』でも解説しているが、ベンチャー企業がその主役のように聞こえるフィンテックによって、現実的にはすでに多くの人が知っている大きな企業が銀行の脅威となる要素を秘めている。たとえばインターネット通販(eコマース)大手の米アマゾン・ドット・コムがそれにあたるのではないかと筆者は考えている。

アマゾンは、本だけにとどまらない品ぞろえの豊富さや、スピーディな配送などによって、現在、多くの利用者を集めている。最近では、無人コンビニエンスストアの新業態「Amazon Go」を発表した。客が事前に専用アプリをスマートフォンに入れておけば、入店後は、店内のカメラ等を組み合わせてその客が棚からどの商品を取ったか自動認識し、代金計算や決済も自動化するため、客はレジに並ぶ必要がなくなるというものだ。また、AI技術である「Amazon Alexa」を活用したスピーカー「Amazon Echo」を開発・販売したりもしている。

ここまで聞いても、「そのアマゾンが、いったいどう金融に関係するんだ?」という疑問を持つ人が多いかもしれないが、まずアマゾンがビジネス上で「莫大なキャッシュ」を手にしているということが、金融に絡んでいく際の大きなポイントとなる。そこで、同社のビジネスモデルについて初めに理解しておきたい。

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