もしアマゾンが本気で「金融事業」を始めたら

銀行にとって大きな脅威となりうる

このように管理している潤沢なキャッシュフローをどう活用するか? これまでのようにITの分野で活用することもできるが、「取引先の資金繰りをサポートすること」もできるようになる。

実際、アマゾンでは、マーケットプレイス(アマゾンのサイト内にある、同社以外の「出品者」が参加する市場)の取引実績がある法人向けに、「Amazonレンディング」という短期の運転資金のローンを提供してきた。こうした取り組みをさらに拡大する余地はあるということだ。

取引業者に融資するうえでのアマゾンの強みは何か。やはり最大の強みは「商品の流れ(商流)を押さえ、取引実績のデータを持ち、どんな条件でどこまで貸していいかという与信判断に活用できる」ということだろう。アマゾンは、いつ、どれだけの数量が販売でき、またどの程度の期間で資金回収できるかといったデータを手元に大量に持っているからだ。

現在、ネット通販の普及により、配送業者での人手不足や配送効率などが問題になっているが、アマゾンの物流機能は、消費者にとってはすでに「インフラ」になりつつある。

アマゾンの強みは、現在は物流倉庫の効率的なオペレーションだが、仮に自社配送を強化して、その比率が高まってくるようになると、メーカーや卸のような納入業者までもが「自分の会社で物流を抱えるより、アマゾンを使ったほうが効率的だ」と判断するようなレベルに達するかもしれない。

アマゾンが銀行より優位に立てるポイントとは

先に述べたように、「Amazon Go」で決済に新たな利便性を持ち込むことで、アマゾンは次世代のコンビニの形を提示しつつあるが、これも表面的に「決済機能の改善」だけで片づけることはできない。

コンビニのように生鮮食品や加工食品を取り扱うということになれば、取引の規模や頻度はこれまでの本やアパレルの比ではなくなる。消費者がほとんど毎日のように何かしら購入する商品を手掛けるだけに、「いつ、誰が、何を買ったか」といった関連データは膨大なものになる。

食品などを扱うには、いま以上の物流強化は前提だが、取引業者がこれまでとは異なるため、アマゾンからすれば「新しい接点」ができる。また商品の回転も速いため、取引業者の資金需要もさらに強いものが見込まれる。

ここでもう一度、視点を銀行に戻してみよう。銀行の役割としては、「貸出先企業の資金繰りの手当て」も重要だが、実際問題として、貸出先の日々の資金の出入りをリアルタイムで把握するのは難しい。その一方で、アマゾンは商品の流れを押さえ、それとITを掛け合わせることで、金融機関よりも優位に立つことができる。

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