もしアマゾンが本気で「金融事業」を始めたら 銀行にとって大きな脅威となりうる
銀行での企業向けの貸し出しは、これまで「人」がその中心的な役割を果たしてきた。しかし、シンプルに資金の不足分を貸し出すだけであれば、商流を押さえ、大量のデータを押さえるプレーヤーのほうが競争優位に立てる状況が迫りつつある。資金調達の方法に工夫が必要ない案件であれば、「機械に判断させるほうが効率的だ」という時代がくるかもしれない。
人間が機械に勝てる領域はどこか?
一方、金融機関で、機械と比べて人間が圧倒的な優位にありそうなポジションとしては、「プライベートバンキング」がある。これは資産をすでに持っている富裕層の運用をサポートする業務である。
資産運用そのものも、最近はロボットアドバイザーなどのようにコンピュータが運用の助言をするサービスも登場してきてはいる。しかし「プライベートバンキングは違う」というのが多くの意見だろう。
プライベートバンキングは、そもそも個人個人で資産の内容が異なる。また、その多くは相続や節税といった極めてプライベートな内容であるし、顧客ごとにカスタマイズが必要な領域でもある。
そして、顧客側にとっても、誰にでも相談したい内容ではない。話をする「人」ですら選ぶ領域というわけだ。したがって、プライベートバンキングは、機械が人に取って代わることが想像しにくい領域の1つだといえる。
ところが、前述の「Amazon Echo」のような技術が発展し、将来、機械と他愛もないおしゃべりができるようになったとする。そう、見た目は違うが、「ドラえもん」のような存在になったとしよう。そうすると、のび太が困ったときにドラえもんに頼るように、「親や友達には話さない内容」を相談するようになるかもしれない。
もちろん、のび太が相談するのは、ドラえもんが解決策を持っているからこそだが、部屋の押し入れに住んでいるので「接点が近い」ということも大きい。AIが人間の言葉を分析し、処理するスピードや精度もさらに向上していくことで、こうした「近い位置にいる機械」に、人間が誰よりも早く相談するようになる可能性は高い。
こうして、極めて秘密性が高い内容でも、機械がその最初の接点となりうる可能性もある。具体的な金融商品やソリューションの提供まで機械がやるかどうかは議論の余地があるが、そもそも「接点づくり」と「リレーションシップの維持」で苦労をしているプライベートバンキングの分野で、テクノロジーが秘めている可能性は大きい。
このように、すでに機械に優位性があるとみられている貸し出し領域も、また、そうでないと思われているプライベートバンキングの一部の領域も、機械によって侵食されようとしている。その領域を狙えるのが、アマゾンのような異業種かもしれない。
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