日本の育児休業3年は長すぎる 仏ソルボンヌ大・リュシ准教授に聞く

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たとえば、東欧の国々の出生率は低水準です。育児に際して貧困の問題を抱えています。政府は貧困撲滅のために家族手当を一括して付与する方策を採っています。しかし、たとえば、シングルマザーが働いて収入を得るようになると、家族手当はなくなる。それを恐れるあまり、仕事を探そうという意欲がそがれてしまう可能性がある。大事なのは貧困撲滅を狙って家族手当を出すのではなく、むしろ女性の雇用拡大にフォーカスすることではないでしょうか。

女性上級管理職40%以上維持を企業に義務づけへ

――フランスは財政面で厳しい状況に陥っています。家族政策の予算自体が減額される可能性はないのでしょうか。

すでに減らす動きが出ています。低所得の家庭に対しては減税措置を講じましたが、一定水準を上回る収入のある家庭に対しては家族手当に上限を設定しました。その結果、20億ユーロを削減することができました。今後も裕福な家庭に対しては家族手当を削減、ないしは付与しない方向へと傾いていくでしょう。

もっとも、家族政策で重要なのは中身です。フランスを含めて出生率の高い国は託児所など保育サービスへの予算を手厚くしています。北欧諸国では税額控除などの措置が講じられていないにもかかわらず、高水準の出生率をキープしています。一方、出生率の低い国には、家族手当として現金を一括給付するところが多い。

――フランスの場合、25歳以下の若年層の失業率が高水準です。将来、出生率に悪影響を与えることになりませんか。

確かに経済危機は将来の出生率によくない影響を与えるでしょう。子どもを持つか持たないかの意志決定に大きく関わる問題です。もっとも、出産のタイミングを遅らせようということもあるかもしれません。そうなると、ある期間は出生率が低下するものの、その後は回復に転じるシナリオも考えられます。

――「晩婚化」が進むと、日本のように出生率が低くなりませんか。

ドイツでも「晩婚化」が進んでいます。第1子を産む女性の平均年齢は30~35歳、第2子は35~40歳です。24~25歳で学業を終えた後、5~10年ぐらい仕事をする。「キャリアを積んだ段階で、結婚や子どものことを考える」というパターンが多い。

一方、フランスでは大学などを卒業するのが24~25歳と同じですが、早めに結婚や「PACS」による共同生活に踏み切って子どもを産む傾向がある。25~30歳で第1子を出産します。仕事を始めるのもほぼ同じタイミングです。

フランスでは上級管理職レベルの40%以上が女性であることを企業に義務付ける法律が2017年に施行される予定です。ドイツ政府はこうした政策に反対しています。あくまでも企業の判断に委ねるべきとの立場です。女性をマネージャーに採用するといってきたのに今のところ、状況は改善されていません。男女の雇用条件を見ると、仏独間には大きな格差があります。男女間の賃金格差はフランスの17%に対してドイツは22%です。

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