実際には、片岡剛士氏は、2014年から量的金融緩和強化の必要性を主張し、また脱デフレの阻害要因になる2014年4月の消費増税に明確に反対した経歴がある「少数派エコノミスト」である。佐藤氏、木内氏とは異なる考えを持っていることは明らかで、岩田規久男副総裁や原田泰審議委員らとかなり近い立場と思われる。この人事を踏まえれば、日銀が脱デフレのために金融緩和を徹底する姿勢について、安倍官邸による後押しは続いているとみることができる。
つまり、これらの人事決定の経緯から推察すると、安倍政権の経済政策の根幹は変わっていない。2018年以降の日銀の体制はこれまでと変わらず、金融緩和が徹底され2%インフレの早期実現が最優先されるとみられる。こうした安倍政権の姿勢は、日本株にとってはポジティブだし、ドル円にとっては円安要因になると筆者は予想する。
「円安へ反転」のメインシナリオは、いつ実現するのか
ただ、一方で4月初旬から世界の金融市場の様相は一変した。言うまでもないが、トランプ政権の外交政策の転換がきっかけである。対シリア政策の変更により同国への攻撃が行われ、同時に北朝鮮との関係が緊迫化している。これらが、市場の不確実性として強く認識され、米経済指標やFRB(米連邦準備制度理事会)の政策は市場の関心事にはならず、リスク回避姿勢の強まりから米金利低下とともに、ドル円は1ドル=108円台まで円高が進んだ。
世界経済の動向は変わらず企業業績の改善が続いている。そのため、仮に北朝鮮をめぐるリスクが和らげば、これまでの円高も反転、その後は大幅な円安になるだろう。ただ、実際には、北朝鮮をめぐる米国と中国の駆け引きが長期化するとみられ、金融市場の雰囲気は簡単に変わらないと筆者は考えている。
ファンダメンタルズや金融政策を踏まえれば、年初からの円高は続かないし、想定される円安反転は、2016年11月からのトランプ相場のように大きなリターンをもたらす可能性がある。そうした意味では、2017年の投資リターンを決定づける1つの勝負どころを迎えつつあるといえる。
だが北朝鮮情勢という極めて不確実性が強いイベントを前に、そうしたシナリオが早期に訪れる可能性は高くないだろう。トランプ政権による、減税などの景気刺激策を続ける方針は変わらないが、地政学への対処にトランプ政権の政治資源が使われるとの思惑が強まり、トランプ相場の前提となっていた景気刺激政策への期待は、今後さらに低下する可能性がある。
このため、目先は、流動性の確保を重視するポジショニングが重要になると判断している。一方、株式・為替相場の趨勢を決める経済状況に対する筆者の認識は、年初からほとんど変わっていない。先に述べたように、2016年同様、Brexit(英国のEU離脱)など政治要因がもたらす市場心理の振幅が、投資機会に十分になるだろう。
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