4月10日のコラム「「人余り」が解消、いよいよ賃金は上昇局面へ」には、Web上でいつもよりも、かなり多くのコメントを読者の方から頂戴した。コラムの内容を短くまとめると、「2017年2月に失業率が2%台に低下していることは、日本経済の問題である人余りが解消されつつあることを示し、それは金融政策を主軸とした総需要安定化政策の成果である」、という見方を述べたものだった。
寄せられたコメントの半分くらいは、筆者のそうした見方に批判的だった。
これは、筆者の力量不足もあるだろうし、メディアで流れている通説が案外多く広まってしまったこともあるのだろう。だが、失業率が23年ぶりに2%台に低下したことについて、多くの方が誤解されているように見える。今回のコラムでは、そうした誤解を解くことにチャレンジしたい。
頂いたコメントで多かったのは、「失業率の低下は、人口減少、働き手の減少によってもたらされた」というご意見である。ご指摘のとおり、高齢化・団塊世代の引退で働ける人が減るので、失業者の数も減少するし、労働市場の需給バランスが改善するのは、そのとおりである。
なぜ失業率低下の主因は人口や働き手減少ではないのか
だが、3%を下回るまでの失業率低下の主たる要因が、人口・働き手の減少であるというのは、以下で説明するとおり誤解であると考えている。まず、15-64歳(現役世代)の人口は、1997年がピークで、それ以降毎年減少し続けている。具体的に言えば1998年以降、同人口は毎年平均で0.7%減少し続けている。
ところが、現役世代の人口が減り続ける中で、1990年代後半から失業率は大きく上昇、2000年代には5%台まで悪化した。
つまり、現役世代の人口の減少幅より、雇用削減幅が大きかったため、失業率が上昇していたのである。そして、2010年代に失業率は低下に転じたが、2000年代までとは逆に、雇用が増え失業が減ったので、失業率が1994年以来の水準まで再び正常化したのだ。
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