以上がやや長い目でみた、現役世代の人数と失業率の関係である。景気の変動による雇用者数の増減が、失業率の動きのかなりの部分を説明しており、人口動態の影響が小さいということである。
一方、現役世代の数は1998年から減り続けているが、団塊世代の引退などでその減少ペースが2012年から年率1%の減少にまで「ペースアップ」している。それが、2012年の失業率低下(改善)を後押しした部分は多少ある。ただ、2013年以降、4%を下回る水準まで低下した失業率の主たる要因は、アベノミクスが発動された、2013年からの景気回復で新規雇用が生まれたことに求められる。
具体的に就業者数の推移を確認しよう。リーマンショックが起きた2008年から、民主党政権最後の年の2012年までの4年間で就業者数は129万人減少した。
その後アベノミクス発動後の4年間で就業者数は185万人増えている。民主党政権下で減少し続けた就業者数が、アベノミクス発動による景気刺激政策で一転して増えたことは明確である。一方、2013年以降の4年間で、失業者は80万人減っている。4年間での就業者数から失業者数を引けば分かる通り、2012年まで就職を諦めていた人たちに新たな雇用の場が、約100万人分創出されたのである。
民主党時代は金融緩和が不十分だった可能性
実は、失業率だけをみると、民主党政権下の2011~12年にも失業率は低下している。そのため、失業率の低下と金融緩和強化は関係ない、などと言う論者もいる。ただ、2011~12年までの失業率低下と、金融緩和が発動された2013年以降の失業率低下は、その中身が全く異なることは明らかである。
デフレと総需要の不足下において、景気刺激的な金融緩和、財政政策が適切かつ十分行われたとすれば、経済成長率は高まり雇用が増える。これは、ベーシックな経済理論が教えることだが、それが実現しただけに過ぎない。そしてこのことは、かつては金融緩和が不十分であった中、雇用創出が十分起きなかった可能性を示唆している。
失業率だけでなく就業者数の推移など関連指標を丹念にみれば、2013年からの労働市場の改善によって、新たな雇用が生まれ、その分家計所得全体が底上げされたことは否定することはできない。そして、歴史的な長期政権となっている安倍政権の支持率の高さを保っている最大の要因は、(100点満点とは到底いえないものの)妥当な経済政策運営を続けていることに求められると、筆者は考えている。
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