筆者は2017年について、日本株やドル円相場に影響を及ぼす国内要因は、数少ないと考えている。後述するとおり、米国のトランプ政権や地政学リスクが市場の主たるテーマとなっている。国内要因としては数少ないイベントとなる材料は、衆議院解散の有無、そして2018年に任期満了を迎える「黒田日銀体制」がどう変わるか、が挙げられる。
日銀人事は上半期「国内最大のイベント」だった
黒田東彦総裁率いる日銀は、2013年春から、脱デフレと2%インフレ実現に向けて粘り強く金融緩和を続けている。そして、執行部が任期満了を迎える2018年以降、黒田現総裁と同様かまたはそれ以上にふさわしい考えを持ち、かつ脱デフレの意思を持っているメンバーが、日銀を率いるかどうか。これが、日本の金融市場の行く末を大きく作用すると考えている。
一方、安倍晋三政権が2021年まで続くシナリオの可能性が高まっている。そして、安倍官邸が経済重視の政策を続け2%インフレ・完全雇用・経済の正常化を、完遂させるためは2つの政策オプションがある。それは、次期日銀執行部の選定そして総需要安定化としての財政政策である。
実際には経済政策運営に携わるプレーヤーは多岐にわたる。そして、今後決まる2018年以降の日銀の体制は、安倍官邸の経済再生への意思、そして政策の一貫性を判断する最も重要な材料である。なお、黒田総裁の後任については、日本のメディアではすでにいくつか観測報道が流れたが、多くの記事の内容は当てにならないと筆者はみている。
2018年以降の日銀の体制を想定するうえで、目先の大きな判断材料は、この6月に任期満了を迎える2人の審議委員の後任人事である。実は、筆者は投資家の立場から、2017年前半の国内イベントとしてこの点のみに注目していた。そして、4月18日に、三菱UFJリサーチ&コンサルティング上席主任研究員の片岡剛士氏、そして三菱東京UFJ銀行取締役常勤監査等委員の鈴木人司氏が、政府から審議委員候補として提示された。
交代することになった佐藤健裕審議委員、木内登英審議委員は黒田執行部が発足する前から政策決定会合のメンバーだが、両者とも量的金融緩和政策に批判的な意見を述べている。木内審議委員は、日銀による国債購入縮小を提案してきた。両者はいずれも政策委員会でも現在は少数派と位置づけられるが、両者の後任人事については、量的金融緩和政策に批判的なエコノミストなどが選ばれるなどの観測が市場の一部でささやかれていた。
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