トランプ氏が1月20日に第45代米国大統領に就任、早くも10日が経とうとしている。トランプ大統領については、さまざまな報道がなされているが、反トランプ寄りにたつ米メディアの批判的な論調が多く、それに影響されてか、日本のメディアでもトランプ政権を警戒する立場から批評するものが多い。
実際に、就任演説でトランプ大統領が述べた発言は、これまで示していた方針、姿勢を繰り返した部分がほとんどで、ホワイトハウスの声明も同様である。1月16日のコラム「いよいよ日米で現実味帯びる『財政拡大政策』でも述べたが、トランプ政権がかかげる財政拡大政策が議会を経て、どの程度実現するかが判明するのは、やはり3月以降になるだろう。そして、後で述べるように、この点が、2017年の金融市場の趨勢を決すると予想される。
「漠然とした円高への不安感」の源流はどこにあるのか
こうした中、日本の為替アナリストの多くが、トランプ政権が保護主義的な政策を全面に打ち出していることを円高リスクと指摘し、メディアでもそうした見方が散見される。為替市場で1月半ばから円高ドル安に動く場面が多くなっていることには、そうした漠然とした不安感が影響しているとみられる。
筆者も、トランプ政権が、「貿易赤字」を目の敵にして広範囲な関税引き上げなどで企業活動に介入するのは、長期的に経済成長率を低下させる側面が大きいと考えている。
もし、仮に広範囲な保護主義政策を進めれば、トランプ政権は4年後の大統領選挙で痛い洗礼を受けるのではないか。一方、トランプ大統領がかかげる通商政策は、移民制限策とともに、選挙戦勝利の戦術の一つだった側面もあるだろう。実際には企業活動に影響を及ぼす通商政策は、一部の製造業だけに対象が絞られ実現すると予想される。
また、トランプ大統領の発言を踏まえると、貿易赤字縮小の最大のターゲットは中国だと推察される。中国に対する米国の外交姿勢についても、オバマ前政権と比較すると大きく変わるかもしれない。一方で、同国を通貨操作国に認定するとの公約を翻した。その理由は分からないが、ブレーンの助言などを踏まえ、軍事的な側面を考慮しつつ中国に対する外交政策に挑む現実路線を採用しているようにもみえる。
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