「トランプ大統領=円高継続」は正しくない 米国と日本は「財政緊縮病」を克服しつつある

✎ 1〜 ✎ 79 ✎ 80 ✎ 81 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

新たな局面を迎えるかもしれない米中関係が、今後どう変わるか予想し難い。そして、この不確定要因が円高を招くというのが、為替アナリストの恐れなのだろう。ただ、昨年の大統領選挙前後も円高見通しを声高に唱えられていたことが思い出される。同じパターンの繰り返しが通じるとは考えにくいが、こうした円高の動きは投資機会の訪れを意味するかもしれない。

トランプ政権の拡張財政政策は世界経済のプラスに

いずれにしても、先に述べたとおり、トランプ政権による財政政策転換で、経済成長率が高まるかどうかが、2017年のドル円を含めたリスク資産のパフォーマンスを決定すると筆者は考えている。

この意味で、「アメリカファースト」を掲げるトランプ政権は、雇用創出も強調している点は重要だろう。トランプ大統領は「雇用創出にもっとも効果があるのは、財政金融政策などの総需要安定化政策を徹底することである」という点を今後認識していく、と筆者は予想している。であれば、それ以外の通商・外交関連の報道は、為替市場のノイズに止まることになる。

具体的にはトランプ大統領が掲げる、法人・家計の減税政策、さらにはインフラ投資などで政府支出増大が実現するかどうかである。議会における議論がどう展開するかは依然流動的だが、当社エコノミストは、2018年半ばまで約2000億ドルの減税(GDP比率約1%)、さらに2019年までの7000億ドル規模の政府支出拡大、が実現すると予想している。

ところで、黒田東彦・日銀総裁が1月19日のダボス会議で、「(トランプ政権による減税やインフラ投資は、)米国や世界経済にプラスになる」と述べたと報じられている。すでに2016年の伊勢志摩サミットで「財政政策による成長押し上げを目指す」との議論を安倍首相が先導していた。この背景には、2014年の消費増税断行という緊縮政策がアベノミクス推進のうえで痛恨の失政であり、日本は世界経済の足を引っ張った、という反省があるのだろう。

書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

そして、トランプ政権による拡張財政政策が実現すれば、成長停滞が続く世界経済のプラスになるだろう。トランプ政権誕生は、オバマ政権下で続いた緊縮的な財政政策で景気回復の遅れが続いたことが影響した、と筆者はみている。2009年から2012年秋まで続いた日本の民主党政権が、緊縮財政を徹底して国民から見放され、それがアベノミクスの原動力になったが、「米日」には共通点があるわけだ。その意味で、アベノミクス発動同様、トランプ政権誕生は、国際経済学者のマーク・ブライス氏が論じる「緊縮病」から、両国が抜け出す政策転換に位置付けられると筆者は考えている。

今回、トランプ政権誕生を、筆者が投資家の視点でどのように見てきたかなどをテーマにした書籍を、上梓させて頂くことになった。「日本経済はなぜ最高の時代を迎えるのか? ― 大新聞・テレビが明かさない マネーの真実19」(2月3日発売予定)である。同書が今後の投資判断の一助となれば幸いである。

村上 尚己 エコノミスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事