日本株の下落は「地政学リスク」のせいなのか 「外国人投資家」が売る理由は別にある
いま市場では「地政学リスク」という言葉が跋扈している。筆者は以前から、具体的に何を指すか不明瞭な言葉だと感じているのだが、積極的な買いを手控えさせるには最も効果的な「リスク」なのかもしれない。具体的な地域がどこを指すかといえば、北朝鮮やシリアなどだが、先週末はエジプトなど世界の他の地域でもテロが発生した。長らくテロが発生していないのは日本ぐらいかもしれない。つまり地政学リスクは、どこの国にも当てはまるリスクだということだ。
日本株が下げている真の理由は「国内政治リスク」?
しかし、先週末の日本株の下げに関しては、まさに「地政学リスクが要因」という市場コメントが目立った。もちろん、北朝鮮のミサイル問題に関しては、深刻度を増している。かくいう私も「地政学リスク」という言葉を結局は市場解説で多く使用したのだが、足元の日本株の下げは、本当に「地政学リスク」が要因なのだろうか?
この玉虫色のリスクだけ見ていると本当のリスクを見失うような気がする。もちろん、米国の「トランプリスク」も気になるところだが、本当のリスクとは、国内政治リスクだと筆者は考える。
早い話が「森友学園問題」である。ある程度ピークは迎えたような気がするものの、2月から続くこの問題によって、アベノミクス相場のけん引役だった外国人投資家が日本株から離れているのではないかと思われる。
本当にそうだろうか。まずは、最新の外国人投資家の売買動向を確認してみよう。東京証券取引所が発表した3月第5週(27日-31日)の投資部門別売買動向(現物+先物)では、外国人投資家が1146億円の売り越しとなった一方、信託銀行が2792億円の買い越しとなった。信託銀行はTOPIX先物を2428億円買い越していることから、こちらの買いは「配当の再投資に絡んだ買い」とみていいだろう。
外国人投資家の売り越しは4週連続で、3月月間ベースでは1.7兆円ほど日本株を売り越している。1月-3月では2.1兆円の売り越しだ。昨年は原油価格急落に伴うオイルマネーによる日本株売りが膨らみ、同期間で5.5兆円の売り越しとなった。今年の売り材料は今のところ定かではないが、地政学リスクが市場で話題となる前から、外国人投資家が日本株を売っていたことを考慮すると、やはり日本国内の政治リスクが要因ではないかと思われる。
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