日本株の下落は「地政学リスク」のせいなのか 「外国人投資家」が売る理由は別にある

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外国人投資家による売りを細分化すると、3月第4週と第5週はTOPIX先物を1000億円超売り越している。期末に伴う需給要因との見方もできるが、3月下旬辺りから、市場では「午後のTOPIX(東証1部上場全銘柄を指数化したもの)先物の売り」が話題となっていた。この流れは今も続いている。日経平均が高く寄り付いた後、大引けにかけてだれるといった展開が非常に多い。4月11日は陽線で引けたものの、3月30日から4月10日まで8営業日連続で陰線を残した。

TOPIX先物売り継続なら、日本株の一段の下落も  

わかりやすく説明すると、TOPIX先物を手掛けるのは中長期のスタンスをとる投資家、日経225先物を手掛けるのは短期的な投資家といった見方もできる。短期的な投資家が日経225先物に注目するのは、TOPIXのような多くの銘柄で構成されている指数よりも、225銘柄で構成され、ファーストリテイリングやファナック、ソフトバンクグループといった指数インパクトが大きい銘柄が存在する指数のほうがコントロールしやすいのだろう。

ここ最近のTOPIX先物売りは、日本市場から中長期的な投資を手掛けている投資家の資金が流出していると推察できるのではないか。まだ結論に結びつけるには、投資主体別売買動向のデータが足りないが、今後も外国人投資家によるTOPIX先物売りが続くとすれば、日本株は上値が重いどころか、じりじりと下落が続く可能性もある。

「森友学園問題」がどういった収束に向かうかは今のところ見えにくい。だが、アベノミクスの象徴である安倍晋三首相が野党からの批判の矢面に立つ光景は、政権そして株式市場にもプラスにならない。先進国のなかで、安倍政権はドイツのメルケル政権に続いて2番目の長期政権である。

そのメルケル政権は夏もしくは秋に行われる連邦議会選挙で苦戦を強いられるとの話もある。となれば安定した政権運営を続けている国は日本だけとなる。安定した政権運営をポジティブな材料とみる投資家は多い。安倍政権が「森友学園問題」で危機に陥るとまでは考えていないが、2012年末以降、変わらず続いていた安倍首相の強い立場がやや揺らいでいることは間違いない。

もちろん日本株高のために、「森友学園問題」を無視したらいい、忘れたらいいというわけではない。時間をいたずらにかけて政治的な空白を作るのではなく、集中的に背景を洗いできる限り短期間で全てを明確にしてほしいのだ。投資家は先行きの不透明感を非常に嫌がる。

仮に政権側になんらかのダメージが残ったとしても、問題がクリアになった際、不透明感の解消で日本株はポジティブな動きを示す可能性はある。日本株の再浮上は、この国内政治リスクにかかっていると考える。不透明感が払拭された際、日経平均は2万円を意識した展開を見せると想定する。一日も早い問題解決に期待したい。

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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