フェラーリ「GTC4 ルッソT」は何が新しいか これまでのファンが持つ常識とは異なる車だ
ただし、乗り心地は硬めに終始する。これもまた、ルッソとの大きな違いである。感覚的にはフロアの板を2枚ほど抜かれたか、と思うくらいにソリッドな乗り心地である。特に低速域から中速域、120km/hあたりまで、が硬い。つまり、日本の合法的な速度域で乗るかぎり、とても硬いクルマだということだ。カリフォルニアTのハンドリングスペチアーレ(HS)に近い感覚だった。
フェラーリの新しい扉が開いた
トスカーナのワインディングでは、その巨体からまったく想像できないほど、水を得た魚になった。乗り心地もそうなら、ドライビングファンという点でも、ルッソTはカリフォルニアTの HS級である。これはもう、どう考えても、12気筒のルッソとは同じクルマであるとは思えない。なるほど、マラネッロのアピールも分からない話ではなかったな、と、乗れば思うにいたる。
そう考えたとき、8気筒のルッソTこそは、現代のFRフェラーリらしい乗り味の持ち主であり、以前のフル4シーターモデル、456GTや612スカリエッティの正統な後継モデルなのではないか、と思うにいたった。だとすると、やっぱり12気筒のルッソは、これまでにない跳ね馬だった、のだろう。
マラネッロによると、ルッソTの購買層はルッソからさらに10歳若返るのだという。もはや、ヤングファミリーの領域である。なるほど、硬派なハンドリング性能と乗り心地はフェラーリらしさを表現しつつも、最近の跳ね馬に共通するターボエンジンフィールと完全フル4シーターで実用的なラゲッジルームを持つシューティングブレークという点では、新しさも存分に演出している。
確かに、これを乗りこなすためには、これまでのフェラーリ・ファンの常識とは異なるセンスとスタイルで挑まなければならないだろう。そしてその先には、さらにピュアな跳ね馬の世界が待っている。
ルッソTでマラネッロに入門するのも、ひとつの手ではないか、と考えた次第。
(文:西川淳)
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