フェラーリ「GTC4 ルッソT」は何が新しいか これまでのファンが持つ常識とは異なる車だ
ちょっとややこしい話だが、こういうことだ。マラネッロはルッソTをルッソの派生グレードであるとは決して言わない。まったく新しい、6番目のモデルであると主張している。その理由は、走りがまるで違うから、らしい。
名前はTが加わっただけで同じようなものだし、内外装のデザインもエンドマフラーと20インチ鍛造アルミホイールを除けばまったく同じ。どうみても派生でしかない。確かに、12気筒から8気筒ツインターボへと換装され、4WDではなくFRの2WDで、機械的な中身はまったく違うかも知れない。だからといって、それは流行のダウンサイジングレベルというべきもので、別のクルマであるとは、いかにマラネッロであっても強弁に過ぎるのではないか。
そんな疑念を抱きつつ、トスカーナの山岳都市モンテレッジオーニからルッソTを駆り出してみれば、はたしてたちまちルッソとはまったく違うクルマだ、とマラネッロの言う通り得心してしまっている自分がいて、驚いた。
12気筒ルッソとの大きな違い
とにかく、軽快だ。ハナ先は驚くほど軽やかに動き、それでいて4輪がしっかりと路面を捉えている感覚が乗り手に伝わってくる。腰から後は、リアタイヤと直結しているがごとく、常に力強く前へと押し出され、しかもスロットル操作にたいする応答性はどんな領域でも峻烈である。
ルッソの12気筒エンジンには、高回転域まで回して力を振り絞るように楽しむという官能性があった(それこそが自然吸気12発の魅力だ)が、ルッソTの8気筒ツインターボはもっと機能的で、サーキット以外では低中回転域を使用しているだけで要求性能のすべてに答えきってしまうほどだ。なにしろ、最大トルクは12気筒比+60Nm以上の760Nmであり、それがなんと3000回転から5250回転までのワイドバンドで発揮される。だから、そのトルク特性を利用して走ったほうが力強く心地いいわけだ。
当然、街乗りでも扱い易い。右足をちょっと踏み込むだけで十分なトルクが溢れ出る。ターボ・ユニットの7段DSGデュアルクラッチミッションとの相性のよさは、すでにカリフォルニアTなどで実証済み。ルッソTでは制御関係がさらに洗練されていた。