マセラティと「三つ星シェフ」の美味しい関係 わざわざクルマで行って食べる料理は格別だ

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どれも“わざわざクルマでいく”というのがよいスパイスになっているようなところがある。でもわざわざ出向かせるぐらいだから、ちゃんとした美味を提供してくれる。

キャンティでのエピソード

かつて東京の繁華街には、夜出かけて軽食が食べられる小さなレストランが多かった。そういえば、ここは小さくないけれど飯倉の「キャンティ」もクルマ好きのリッチ・ピープルのたまり場だった。

キャンティといえば、昨年、惜しくも他界した式場壮吉さんから聞いたエピソードがある。式場さんの弟分ともいえるトヨタのワークス・ドライバーで、1960年代後半のアイドルでもあった福澤幸雄さんとの逸話だ。

福澤さんがトヨタのレーシングカーをテストしているときに事故死したことはクルマ好きならよく知っていることだけれど、式場さんはその福澤さんに兄のように慕われていた。福澤さんはそのころ日本のファッション・ブランドのクリエイティヴのヘッドだったけれど、レーシング・ドライバーになりたくて、英国のレーシング・スクールであるジム・ラッセルに行くことになっていた。そして、出発の前夜、キャンティで式場さんと食事をしたのだという。

「ぼくのベントレーを式場さんに預けておきますね。あそこの角に駐めておきましから」と、福澤さんは言ったそうである。福澤さんからキーを受け取った式場さんは、しかし、帰るころにはそれを忘れてしまった。そうして、なんと、それからほぼ1年(!)して、そのときのことを思い出したのだという。そうして「あのベントレー、どうなったでしょうねえ」と、式場さんは言った。さて、どうなったのやら、ぼくが知るよしもないけれど、古き良き時代の牧歌的な雰囲気がしのばれるぼくの好きなエピソードだ。

さて、モデナのボットゥーラ料理長は、料理のことを語るときクルマの運転を引き合いにだす。たとえば、「料理はバックミラーみたいなもの」と言ったりするのだ。“後ろもしっかり見ないと前に進んでいけないから”というふうに。

で、クルマと料理をつなげるのが、僕はなんであれいいと思うので、マセラティとボットゥーラさんにマルをあげたい、のです。

(文・小川フミオ)

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