マセラティと「三つ星シェフ」の美味しい関係 わざわざクルマで行って食べる料理は格別だ
おもしろいのは、たんに名前を引用したということではない。昨年夏、このクルマを世界中のジャーナリストにお披露目した、北イタリア・ガルダ湖のイメージで仕上げてあったのだ。
ガルダ湖は巨大な湖で、魚はとれるし、沿岸ではオレンジを栽培している。そこでボットゥーラ料理長はミラノ近辺で好まれる米と、フェンネルとオレンジ風味でマリネした魚を材料にした。
レヴァンテが「アドリア海から吹く風」という意味を持つことから、最後は柑橘の香りのミストで仕上げるのだという。なるほど、このリゾットがサーブされたとき、テーブルゲストの鼻先でシュッとひと吹きして完成というわけだ。
わざわざクルマで行く
レヴァンテほど考え抜かれてはいなくても、クルマと料理は相性がいいはずだ。ひと昔前は東京各所にクルマで訪れたひとを迎えるハンバーガースタンドなど散見されたものである。
もちろんクルマと相性のいいレストランは、まだまだ日本各地にいくつもある。クルマでしか行けないレストランもふくめて、だ。
ミシュランのレストラン評価ガイド「ル・ギド・ルージュ」は、クルマでないといけないレストランを多く載せている。ぼくもこの赤いガイドを手に、レンタカーで出かけたことが何度もある。
日本だとよく知られているのは、北海道・ニセコから行く「マッカリーナ」か。ここのシェフは東京・八重洲の「フォーシーズンズ丸の内」のレストランを監修したのも、一部では有名な話だ。熱海の「壹番」の餃子が食べたくてクルマで出かける知人もいる。名古屋のトヨタに取材で行くとき、食いしん坊の広報から必ず言われるのは「クルマで移動しているなら(台湾料理の)味仙に絶対寄りなさい」である。
徳島で鳴門の海を見下ろす丘のうえにあった「古今青柳」もよかった。景色といい味といい、ドライブして出かける見返りがいろいろあった。箱根には「カフェコルソマルケ38」がある。クルマ好きなら、ピンとくるひとがいるかもしれないけれど、かつてアバルトがあったトリノの住所を店名にしている。オーナーはむかしのアバルト車の修理を得意とするひとで、店内はイタリアの香りが漂う。エスプレッソはかなり美味で食事も出来る。デートとか家族で行っても充分堪能できるのだ。