ゆうちょ銀の評価が何ともパッとしない理由 集金力は断トツなのに稼ぎ方の効率が悪い

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まずは口座数から見てみよう。メガバンクはそれぞれ同程度の規模だと考えている方も多いが、実はそうではない。三菱東京UFJ銀行(BTMU)の口座数は約4000万口座ある。日本の世帯数が約5300万であることを考えれば、その口座数の多さがわかるだろう。三井住友はその7割、みずほは6割の規模だ。

経営者が取れる選択肢もまだまだ多い

なお、銀行が持っている口座数は、株式投資家にとっては基礎中の基礎データといえるが、ゆうちょ銀行については、決算資料を端から端まで読んでも口座数についてはいっさい触れられていない。メガバンクのように口座数を詳細に開示していないものの、口座を保有している人数は約1億2000万人いるようだ。つまり、日本人のほぼすべてに近い人数がゆうちょ銀行との接点を持っているという驚くべき状況にある。

ATMの設置台数も、意外なほど差が大きい。それぞれの銀行が持っているATMの台数では、メガバンクの中では三菱UFJが頭1つ抜けている。みずほはイオン銀行のATMでもみずほ銀行ATMと同じ条件で利用できるようにしているが、みずほ単体では5654台だ。

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そのメガバンク3行と比べても、ゆうちょ銀行の約2万7000というATM台数は群を抜いている。国内のセブン-イレブンの店舗数が約1万9000店舗であることを考えれば、その台数の膨大さに気づくだろう。

従業員数は、メガバンクグループに関しては、約2万7000~約3万4000人とおおよそ事業規模に応じた水準といえるが、ゆうちょ銀行に関しては、総資産の規模の割に1万2000人という従業員数は少ない。これは貸出業務などの比率が小さく、一般的な銀行とはビジネスモデルが異なっていたことが要因と考えられる。

その一方で、これまで見てきたように、ゆうちょ銀行は収益率が低い。今後、貸し出しを積極化させたり、有価証券投資も国債から他の証券にシフトさせたりして収益率を改善していくのであれば、ビジネスモデルを変えることにもなる。「効率性改善」という観点では、ゆうちょ銀行は経営者が取れる選択肢もまだまだ多いが、今後は人員増を伴いながら経費が増えることも想定され、いずれにせよ難しい経営の舵取りが必要となるだろう。

泉田 良輔 テクノロジーアナリスト/GFリサーチ合同会社 代表

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いずみだ りょうすけ / Ryosuke Izumida

愛媛県松山市生まれ。慶應義塾大学商学部卒業、同大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修士課程修了(同研究科最優秀賞を受賞)。日本生命保険・国際投資部にて外国株式ポートフォリオマネージャーとしてインターネットやメディア、小売りセクターを担当。2002年から2012年までフィデリティ投信の調査部にて主にテクノロジーセクター担当の証券アナリストとして従事。2013年にGFリサーチおよびナビゲータープラットフォームを設立。ナビゲータープラットフォームでは個人投資家のための金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、同編集長に就任。また株1(カブワン)や投信1(トウシンワン)で監修および運営に携わる。著書『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)、『Google vs トヨタ』(KADOKAWA)、『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)や、日経BizGateでの連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」など多方面で分析や執筆を行う。東京工業大学大学院非常勤講師。株式会社ナビゲータープラットフォーム 取締役。 

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