ゴルフ「クラブ」の新規制でアマはどうする? プロの「飛びすぎ」受けて、用具ルール変更か

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昨年、プロ野球で「飛ぶボール」が問題になったことは記憶に新しい。本塁打が量産されて、調べてみたら高反発のボールだった。球場の大きさはすぐには変えられない。対策するとしても、外野フェンスを少し高くするぐらいだろう。ゴルフも同様で、飛距離が伸びたからといって、ホールの距離をすぐに長くすることは簡単ではない。

マスターズを行うオーガスタでは、筆者が取材した1986年にジャック・ニクラウスが勝ったときは6905ヤードだったが、タイガー・ウッズの登場もあって徐々に改造し、今年は7435ヤードまで伸ばしているが、敷地の広さなどもあるので限界はくる。

「飛びすぎ」対策で用具規則も見直し

こうした「飛ぶ」というか、「飛びすぎる」流れに歯止めをかけるため、英国スコットランドにあるゴルフ規則の総本山R&A(ロイヤル・アンド・エンシェント・ゴルフ・クラブ・オブ・セント・アンドリュース)は近年、飛距離抑制のために用具の規則を変更してきている。

高反発のクラブを抑え、ボールの飛びを抑え、なんとかゴルフ場が「飛ぶ道具」によって面白さがなくならないようにしようとしているのは、当然の流れではある。

そして今度は、クラブのシャフトの長さを規制する方向になっている。

3月下旬、恒例の「ジャパンゴルフフェア」が横浜で開催された。毎年、本格シーズン入りを前に、ゴルフ業界が新製品などを展示する「見本市」だ。会場では各種セミナーなども行われていて、一般の方が入場できるものもある。

会場でR&Aの「ゴルフ用具規則フォーラム」があったので聞いてみた。ゴルフ規則で48インチまで認められていたクラブの長さを今後、46インチまでに短くしようとしているという。2インチだと約5センチメートルだ。飛距離抑制の一環なのは明らかだが、出席者からは「高齢化で飛距離が落ちるのをカバーするには長さが重要」「1年でも長くゴルフをできるようにしたいというゴルフ界の思いに反する」などという意見が出た。

簡単に言うと、長いクラブのほうが遠心力を利用できるので飛ぶ。ドライバーは男性用45~46インチ、女性用43~44インチが今の主流だが、46インチを超えるものも少なくない。パーシモン時代よりヘッドが大きくなっているので、「当たりやすい」こともあるが、1980年代より2インチほど長くなっている。

ただ、長くなれば扱いも難しくなる。柄が30センチメートルの金づちでくぎを打つのと、1メートルの金づちで同じくぎを打つのを想像していただければいい。日本プロゴルフ殿堂入りしている故杉原輝雄さんは1980年代、飛距離が落ちてきた45歳の頃から毎年0・5インチずつドライバーを長くしていた。筆者が取材していたときには47インチまで伸び、最後は48インチにまでしたという。

トッププロでも長いクラブは扱いが難しいので、少しずつ長くしていく。初心者がいきなり48インチのドライバーを持つとはあまり想像できないが、確かに杉原さんのように年を重ねて飛距離が落ちていくのを、徐々に長くして補っていくというのはありうる話ではある。

ゴルフ規則はプロもアマチュアも、うまい人にもそうではない人にも、すべての人に共通したルール。なので、トッププロの飛距離が伸びたことでアマチュアも含めて飛ばない方向にせざるをえないのだろう。プロが試合で使う道具だけゴルフ規則で規制するわけにはいかないからだ。

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