日本プロゴルフ協会(PGA)が、面白いことを始めようとしている。発端は筆者が所属している日本ゴルフジャーナリスト協会から、ゴールデンウイーク明けに届いた1通のメール。矢野経済研究所が昨年末にPGAの経営戦略委員会の決定を基に実施した「ゴルファーライフスタイル調査」の報告書をすべて開示するという内容だった。
普通、こうした調査は調査した人数や設問の量などによるが、100万円単位の費用がかかる。今回の調査は出現率調査(1次調査)で全国18~79歳の男女2万人、続いて本調査(2次調査)で全国20~79歳の男女4500人に、インターネットモニター調査をしたという。
矢野経済研究所では、調査結果を「ゴルフ産業再活性化に向けた戦略立案のための基礎資料」として経営戦略委員会に提示し、PGAを通じて無料で開示するという。しかも、メディアやゴルフ業界だけではなく、一般にも。ビジネスマンの方々なら経験があると思うが、こうした調査報告書は企業や組織内で使われるのが普通。おカネと時間をかけた調査の報告書は、どちらかというと「企業秘密」の部類に入り、だれにでも見られるように公開するとは、どうしたことなのだろう。
調査結果を「一般公開」する理由
ゴルフ人口は最盛期の3分の2以下、2015年は760万人と若干回復したものの、右肩下がりの傾向に歯止めがかかったとは言えない状況にある。ゴルフ界の再活性化案としてPGAでは倉本昌弘会長を中心に再活性化への提言書を2015年にゴルフ界に提示した。しかし、ゴルフ界に危機感はあっても具体的な動きは散発的になっている。
ゴルフ界にとって、「業界横断的な連携」「他業界との連携」は苦手分野とも言える。「新規ゴルファー創出」や「既存ゴルファーのリタイア防止」、そして「元ゴルファーの回帰」は、ゴルフ界の大命題の1つになっている。だが、何か具体策があるかといえば、「これぞ」という起死回生のアイデアはそうそう飛び出してこない。
報告書をまとめた矢野経済研究所の三石茂樹スポーツ事業部部長は、調査の目的について「PGAとして新規ゴルファー創出のためのゴルフデビュープログラムを始動していますが、それは将来への種まき。それと同時に、短中期的にゴルフ人口を減らさないためには、既存ゴルファーをやめさせず、またゴルフをいったん中止している人に戻ってきてもらうことが大事。そのために、ゴルファー対象の消費者調査を実施することにしました」という。
ではなぜ、その結果をすべて公開してしまうのだろうか。さっそく、開示されているPGAのホームページ(HP)を見た。そこには「『ゴルファーライフスタイル調査』報告書(サマリー版)」という簡易版が確かに開示されており、すべてのデータが載った詳細版の無償提供を受けるための「条件」が記載されている。
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