牛丼の吉野家がホームラン狙いをやめる理由 短期間で新商品を次々と投入する戦略に
2018年2月期は売上高2020億円(前期比7.1%増)、営業利益44億円(同135.9%増)とかなり強気の計画を掲げる。原材料である牛肉の仕入れ価格が前期比でさらに低下することにより、原価率は1.3%の改善を見込む。
前提となっているのは、やはり既存店売上高が前年を大幅に上回ることだ。吉野家は2.4%増を計画、吉野家以外の主要3チェーンの前提も前期並みと、掲げるハードルは低くない。
既存店をどうやって伸ばすのか。今期は商品の改廃サイクルを早める構えだ。従来、吉野家は半年に1回程度、「麦とろ牛皿御膳」「牛すき鍋膳」といった大型商品を投入する、いわば「ホームラン狙い」の戦略だった。ともに過去のヒット商品だが、前期はそれぞれ導入2年目、4年目を迎え、効果も限定的だった。
ライバル社は先を行く
そこで、今後は新商品の投入サイクルを約45日と大幅に短縮する。来店客に「来る度に新しい商品がある」目新しさを植え付けることが狙いだ。
「たくさん手数を出す中で、これはというものがあれば、磨きをかけるやり方に切り替える。ヒットの延長がホームランになればいい」(河村社長)。過去のヒット商品や成功体験にしがみつくのではなく、地道にトライアンドエラーを積み重ねる戦略に舵を切るのだ。
背景には、時間をかけて開発した商品が想定ほど売れなくなったという危機感がある。客層を拡げ、来店頻度を引き上げるためには、客のニーズを反映したこまめな新商品投入が有効と判断したのだ。3月に投入した「豚スタミナ丼」は、既存の定番商品を少しアレンジしたものだが、若い客を中心に反応は上々だったという。
だが、客足を引き上げるのは容易ではない。競合他社はすでに商品サイクルを早めている。松屋フーズが運営する松屋は、2週間に1回程度、限定商品を投入している。定食などの値引き、増量といったキャンペーンも含めると、1カ月に3回程度は販促を打っていることになる。
こうした施策が奏功し、松屋の既存店売上高は2016年度通期で4.2%増と好調を維持している。どんぶりメニュー以外に定食も充実しているため、客単価も高めだという。
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