米国はこのままだと衰退する危険が出てきた トランプの「おバカ政策」連発はかなりヤバい

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まだまだ取り上げたい事例は多いのですが、このへんで総括をさせていただくと、トランプ政権が愚かな行為を繰り返し続ければ、これまで築き上げてきた米国の威信は地に堕(お)ちることになるでしょう。過去からの約束事や協定を反故にすれば、その相手国は米国を信用できない国だと見なすようになるからです。その結果、アジア域内の米国の同盟国の中にも、米国とたもとを分かち、中国寄りの姿勢を鮮明にする国が出てきてもおかしくはありません。米国が戦後に築いてきた安全保障体制が揺らぐ可能性があり、トランプ政権は共和党や議会との対立を先鋭化していくことも十分に考えられるのです。

政権がなすべき経済政策とは雇用を増やすことではない

また、このままだとトランプ政権が存続し続けるかぎり、これまで培ってきた米国経済の競争力は弱まっていくのが避けられないことになるでしょう。政権がなすべき経済政策は、雇用を増やすことではなく、生産性を引き上げることであるからです。

生産性を引き上げることこそが、最終的には雇用の増加に結び付いてくるのです。トランプ大統領は米国の自動車メーカーに対して国内の設備投資を増やせと恫喝しましたが、市場が縮小するタイミングで人件費が高い米国で設備投資をするのは愚かな選択肢というほかありません。大統領はその見返りとして環境規制を緩和するのでしょうが、環境規制は世界的に将来の技術革新の原動力になるはずなので、長期的に見れば、米国の自動車産業の生産性は落ち込むリスクが高まっていくでしょう。

トランプ大統領のような無知な人物では、世界一の大国の大統領はとても務まらないでしょう。政治的にも経済的にも法的にも間違ったことを信じている人たちが側近として固めているのが、トランプ政権の異常な方針に影響しているのは間違いありません。トランプ政権が4年間持ちこたえるかどうかは、政権入りしている常識のある人たち、とりわけジェームズ・マティス国防長官、レックス・ティラーソン国務長官、マイケル・フリン前大統領補佐官の後任になったハーバート・マクマスター大統領補佐官の3人が、どれだけ軌道修正できるのかにかかっているといえるでしょう。

彼ら3人は安全保障エスタブリッシュメントの準メンバーです(ティラーソン国務長官を親ロシア派と言う人もいますが、必ずしもそうではありません)。安全保障エスタブリッシュメントとは、安全保障・外交を担う組織や諜報・司法を担う機関で、次官、長官などを務めた経歴を持つ人々などのことを指しています。

彼らはシンクタンクや企業の役員に転身した後でも、米国の安全保障に関して隠然たる影響力を維持し続けているのです。CIAとFBIを影響下に置くエスタブリッシュメントは、大統領周辺とロシアのつながりの証拠をすでに数多く握っていて、それをメディアに小出しにリークしながら大統領に軌道修正を促していくつもりなのでしょう。

現に、フリン前大統領補佐官とロシア駐米大使の会話記録に続き、選挙対策会長だったポール・マナフォート氏がロシア当局幹部と頻繁に連絡を取っていたことや、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問がロシア駐米大使やロシア国営銀行頭取と面会していたことが明らかになっています。トランプ大統領が極端な主張を捨て普通の大統領にならないかぎり、エスタブリッシュメントはスキャンダルを次々とメディアにリークし、大統領が議会で弾劾される方向へ持っていくことになるでしょう。そのように考えると、少なくとも安全保障の分野では、大統領はある程度の軌道修正を余儀なくさせられるのではないでしょうか。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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