トランプ政権、「核先制使用」のリアルな不安

冷戦時代のような議論が息を吹き返した

トランプ氏は昨年3月、米大統領選挙予備選中に、過激派組織「イスラム国」(IS)による対米攻撃には「核で反撃する」と発言した。さらに自分の外交顧問に「核があるのになぜ使わないのか」と質問したとも報道された経緯がある。

さらに当選後の昨年12月22日にツイッターで「米国は世界が核に関して理解するまで核能力を拡大・強化する」と述べたほか、日本と韓国が核武装することも構わないといった「無謀なアイデア」(ワシントン・ポスト紙)を口にするなど核専門家らの間で不安が広がっている。

先に日本、韓国、中国を歴訪したレックス・ティラーソン国務長官も、急速に進展する北朝鮮の核・ミサイル開発に対して、「あらゆる選択肢」を検討中だと言明。北朝鮮に対する先制攻撃や韓国への核兵器再配備もトランプ政権内で検討中だと報道されている。

トランプ氏は短気でキレやすい性格のため冷静な検討もせず「核の引き金」に手を掛ける可能性に対して恐怖感も強まっている。特に緊急事態では軍や議会は大統領の決定を阻止できないため、法案提出に踏み切ったとみられる。

核戦争計画は、冷戦時代には「単一統合作戦計画(SIOP)」と題した文書にまとめられていたが、冷戦後は戦略軍司令部が実行する「作戦計画8010号(OPLAN8010)」に明記されている。

「核兵器使用」をめぐる米国の実情

「核兵器のない世界」を標榜したオバマ大統領も、実は2009年と2012年の2回、改訂版をOPLAN8010-09とOPLAN8010-12として決定している。その内容は機密で表紙のみ公開されているが、全米科学者会議(FAS)のハンス・クリステンセン研究員によると、核兵器を使用する敵対国・組織は5カ国プラス1組織となっている。

5カ国はロシア、中国、北朝鮮、イラン、シリア。1組織はイスラム過激派とみられ、これらの国・組織が大量破壊兵器(WMD)を使用した場合、核兵器も含めた手段で反撃する形となっている。トランプ政権はこれを引き継ぎ、必要に応じて改訂版を作成することになる。

核先制使用の場合は、ホワイトハウス内の大統領から、固定の通信ネットワークで指示が出される。

しかし、大統領がホワイトハウスの外に出た際に、敵対国から核攻撃を受けた場合には、ホワイトハウス駐在武官が常に携行する重さ約20キロの「フットボール」と呼ばれるカバンに搭載された機器で反撃を指示することになる。SIOPないしは現在のOPLAN8010の隠語が「ドロップキック」であり、それを指示する装置がフットボールと呼ばれるようになったようだ。

フットボールの中には、反撃のオプションとして敵の核基地など攻撃目標を記した文書、大統領本人であることを示す認証カード、大統領らが身を隠すシェルターの説明文書、国民に非常事態を告げる緊急放送の装置、コンピューター、衛星電話などが入っている。

トランプ氏は歴代大統領と同様に、ホワイトハウスに入る前に、戦略軍司令部の専門家らから説明を受け、1月20日の宣誓就任直後に秘密裏にフットボールを引き継いだ。

しかし、2月に安倍晋三首相とゴルフをまじえて会談したトランプ氏のフロリダの別荘では、「フットボール」が無造作に置かれ、運搬役の武官が別荘コンプレックス内のレストランで一般客と一緒に撮った写真がSNSに投稿された。この問題はトランプ政権の不注意な行動、と批判された。

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