「テロ」と「偽情報」、メディアは課題が山積だ フェイクニュースが世界を騙している

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「テレビには信頼がない。テレビニュースは情報ではなく、劇場(ショー)化している」

前出のローラン記者は、テレビニュースの現状を厳しく批判する。フランスでは、シャルリーエブド紙本社への襲撃事件以来、24時間放送のニュースチャンネルが人気を集めている。こうしたニュース専門チャンネルは、常に新しいニュースを現場から記者がリアルタイムで伝える中継スタイルが人気だ。

ただ、発生直後は伝えるべき情報が多いものの、何時間にもわたって現場から新情報を伝え続けることは難しい。時間が経つごとに情報は限られ、少しでも新しい情報をと、ネットに溢れた「危うい話」を、「裏取りなし」に伝えるレポーターも少なくない。ただ、こうした危険な状況は海外メディアに限ったことではない。

ここ数年で日本のテレビメディアの中継の環境も大きく変わった。以前は海外から日本に向けて中継するとなると、1回100万円強の衛星回線を使わなければ中継はできなかった。しかし、インターネット環境の向上と簡易中継機の発達により、海外からの中継はぐっと安価で手軽なものになった。

SNS上に出回る話も中継のネタに

加えて、日本では報道・情報を扱う生番組が増加し、ひとたびテロのような大事件が起きると、何度も何度も海外と中継をつなぐケースが増えている。情報源が限られる海外では、地元の海外メディアの情報を元に伝えることが多い。SNS上に出回る話も中継のネタになる。

日本のメディアの場合、デスクのチェックも厳しく、そのまま放送することは簡単ではない。ただ、テロ発生直後など混乱した状況では、「まだ確認は取れていませんが……」と前置きしたうえで、伝えることも少なくない。正直に言うと、自分にもその経験はある。

ローラン記者は言う。「情報がないとき、裏が取れないときこそ、読者に対し『情報はまだない』と、はっきり言える勇気がジャーナリズムには必要だ。確かな情報こそ、ジャーナリズムの根幹だ。ただ、確かな情報を得るには時間も手間も、そして人もお金もかかる。それも読者や視聴者にわかってもらわなければいけない。情報は無料では手に入らない。メディアの信頼を取り戻す道は、確かな情報をきちんと読者や視聴者に届けることしかないのだから」。

天本 周一 朝日放送 報道局パリ支局長

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あまもと しゅういち / Shuichi Amamoto

2014年4月よりANNパリ支局長。09年、社会保険庁の不正免除や年金記録の改ざん問題をスクープ。年金や性犯罪被害者などのドキュメンタリーも手掛け、ギャラクシー賞など受賞歴多数。

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