「テロ」と「偽情報」、メディアは課題が山積だ

フェイクニュースが世界を騙している

ルモンド紙が偽ニュースサイトの判別を始めた一番の目的は「偽情報の拡散を防ぐこと」にある。パリ同時多発テロの後にも、テロ関連の偽情報は拡散した。同時多発テロが起きた夜、ロックバンドがコンサートを行っていたパリ市内の劇場に4人のテロリストが銃を乱射しながら侵入、複数の観客を人質に立てこもった。

その後特殊部隊が突入し、一部の人質は解放されたが、およそ90人が死亡する大惨事となった。昨年9月、この事件をめぐって、ある偽情報が世界を駆けめぐった。きっかけはある国会議員のグループが発表した事件の報告書だった。そこには、「テロリストたちは立てこもりの間、人質に対して拷問を行ったとの証言があった。しかしこの証言に関して、調査はしたが、事実は確認できなかった」と記されていた。

この報告書を入手したあるフランスのブロガーは、「拷問があったとの証言が報告書に記載されていた」と自身のブログに書き込んだ。すると、そのブログを引用する形で、イギリスのあるタブロイド紙が記事を掲載し、今度はその記事を「逆輸入」する形で、フランスのメディアも報道した。そして今度は、その報道を引用する形で、アメリカのメディアが伝え、世界中に「拷問はあった」との情報が広まった。劇場で人質になりながらも奇跡的に生還した被害者たちは、この偽情報によって世間から好奇の目にさらされる結果となってしまった。

フランス大統領選でも偽情報?

メディアを通じて、またSNSを通じて、一度拡散した情報は止めることができない。また、いったん「事実っぽい」とイメージづけられた情報もかき消すことは難しい。

「LES DÉCODEURS」のアドリアン・セネカフ記者によると、フランスでは4~5月に大統領選を迎えるが、最近ではこの選挙をめぐって偽情報が出回ったという。最大野党共和党の候補者の一人であったアラン・ジュペ元首相。昨年11月に行われた共和党の大統領選候補者を選出する予備選挙では、同じく元首相のフランソワ・フィヨン氏との決選投票で戦い、敗れた。その選挙中、ジュペ氏のこんな発言がSNS上に出回った。

「フランスで最も大きなモスク(イスラム教の礼拝堂)をボルドー(仏南西部の街)に造ろう」。ボルドーはジュペ氏が過去に市長を務めた街で、ここにモスクを造るということは、イスラム教の人々=難民を含め、自分の支持基盤のある街にこうした人々を積極的に受け入れるという趣旨の発言と捉えることができる。

今回の大統領選では、反EU、反イスラムを掲げる「フランスのトランプ」こと、極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首が「台風の目」として注目を集める。ルペン党首の支持拡大の背景には、フランスに広がる嫌イスラムの空気が一因といわれている。SNS上に広まったジュペ氏の発言は「イスラム教徒を歓迎しよう。もっと受け入れよう」と訴えるものと捉えられ、ルペン党首への支持者ではないものの、増え続けるイスラム教徒の難民に不満や不安を覚える市民たちをルペン支持に走らせる「引き金」になりかねない代物だった。

しかし、この発言には「からくり」があり、ジュペ氏の発言は、実は「切り取られた」ものだった。この発言の直前、ジュペ氏は「自分が最も言ってはいけないこと」と前置きしていた。つまり、発言自体は正しかったものの、ジュペ氏が伝えたかった意図はまるで逆だったのだ。当然、ジュペ氏はこの発言をのちに訂正し、弁解もした。しかし結果として、候補者に選ばれることはなかった。

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