ホンダ「NSX」長距離ドライブでわかった実力 シビアな面もあるがとにかくよく曲がる

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大方のクルマ好きは、以前のNSXが1000万円程度だったことを引き合いに、倍以上になった!と騒ぐ。けれども、先代と現行モデルとの間には、デビュー年で考えると実に20年以上の開きがある。それがどういうことかというと、90年代において、たとえばフェラーリのV8ミドシップはいくらだったかというと実は1500万円程度で、それが今では3000万円以上になっている。NSXだって、フェラーリのようにモデルチェンジを続けてきたならば、徐々にあのときの倍の価格へと近づいてきただろう。これほどの“反対”や“抵抗”に合うこともなく。

というわけなので、昨今のスーパーカー事情と新型NSXの革新的な技術のディテールを照らし合わせてみれば、乗り出し2500万円以上という価格設定に、さほど違和感をボクは感じない。今回の長距離ドライブでは、そのことのリアリティを肌で感じてみたかった。

非常×非常

鮮やかなブルーメタリックというボディ色も手伝ってか、とにかくよく目立つ。サービスエリアでは、どこでも人だかりができたほどだ。そのなかを、さも自分のクルマのように近づいていくのは、何だか気恥ずかしかったけれども、決して悪い気分じゃなかった。むしろ、もしボクがこのクルマのオーナーだったら、大いに喜んだことだろう。2500万円を払った甲斐があった、と。

人々が驚くのは、何も見た目に限ったことじゃない。注目を浴びるなか、おもむろに走り出せば、このスーパーカーは無音で走り出す。ハイブリッドカーゆえの、EVモードだ。こんなに速そうなクルマが、無音で走りはじめるという非常×非常が、観客の驚きを倍加するのである。

ところが、そんな気分の良さを味わったのち高速道路の本線に入って、たんたんとクルーズしようとしたら思わぬ落とし穴が待っていた。

日本の高速道路は、だいたい90〜120km/hで流れている。その流れにのって平穏に走ろうとすると、これがけっこうシビアなハンドリングに悩まされるのだ。ビシッと安定して走ることが、ちょっと難しい。基本的に後輪駆動のミドシップカーなので、ある程度の“落ち着きの無さ”は仕方ない。

4WDのランボルギーニのようにはいかないもので、フェラーリもけっこうノーズがチョロチョロ動く。けれどもNSXは、ニュートラルの領域でステアリングがやや過敏だ。その上、ミラーあたりからの風きり音も盛大で、聞いているだけで疲れた気分になってくる。このあたり、GTカーとしての資質には、少々問題があると思った。

試しに、最もハードなセッティングのスポーツ+で試してみると、多少、落ち着く。けれども、こんどは乗り心地が随分と硬くなってしまう。悩ましいところである。

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