自分の限界まで全力を出すことが好き
楠木:中竹さんが主将時代の早稲田大学ラグビー部についてのドキュメントを描いた、時見宗和さんの『オールアウト』(スキージャーナル刊)は、スポーツドキュメンタ リーの最高峰だと私は思っています。これを読むと、「全力でやる」「やり抜く」というキーワードが出てきます。「全力を出す」ことはお好きですか?
中竹:自分の限界まで全力を出すことは好きです。全力を出して負けたら仕方がない、というところまでは、とことん行きたいタイプです。
楠木:その辺は、僕とは逆ですね。僕は、全力出すことが嫌いなんです。全力を出して結果が出ないと、本当にダメ、ということになるじゃないですか(笑)。全力を出さな いことで、うまくいかなかったときの言い訳を用意している。ようするに、ダメなやつ(笑)。ところで、考えることはお好きですか?
中竹:好きですし、準備することも好きですね。昔の話になりますが、小学校の1、2年生のとき、国語の本読みの時間で教科書をうまく読めないことがあったんです。も う、周りの子が笑ってしまうくらい。それから、笑われないように、教科書を覚えるくらい読んで授業に備えていました。それで、予習をする習慣が身に付き、 いろいろなことを考えることが好きになりました。
オーラが要らない指導法
楠木:また話が戻るようですが、ラグビー部の監督というと、大きな体格でさわやかな雰囲気だけど、いわゆる上下関係とかの規律については、ほかのスポーツよりも厳しく指導するという一般的なイメージがあると思います。そうした体育会的な雰囲気というかノリは好きですか。
中竹:雑用は下級生がやるべしといった、体育会特有の上下関係は嫌いです。ムダなことですね。体育会的なノリというのは、気合いでどうにかなるという考え方になりがちで、それが私は嫌いなのです。
楠木:そういうお話を聞いていると、中竹さんは伝統的なラグビーの指導者とは大きく異なると強く感じます。ご自身は、指導者としてどんなスタイルだと自覚されていますか。
中竹:早稲田大学での前任者である清宮はカリスマ性があり、オーラもありましたが、私にはほんとにオーラがなかった。日本一オーラがない監督。実際に、初めて学生たちにあいさつしたときに、「オーラないなー」という声が聞こえましたから(笑)。私自身は、サラリーマンから転じて監督として学生を指導することに不安はなかったのですが、指導される学生たちは不安だったと思います。
楠木:これは ラグビーにかぎらず、スポーツの監督という立場の人たちに共通しているのではないかと思うのですが、他人に対して影響を与えるのが好きな人が多いのではないかと思うのです。影響力を行使することが好きという。となると、オーラがあるほうが、監督として指導しやすいわけですよね。
中竹:そうかもしれません。しかし、私は、指導者として選手を引っ張るというよりも、監督やリーダーに頼らず、選手一人ひとりが自分自身で考えることを重視しました。なので、オーラも別に必要ないなと。
(構成:松岡賢治、撮影:今井康一)
※ 続きは、8月2日(金)に掲載します
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