バルセロナが「観光客削減」に踏み切る事情 世界屈指の観光都市が抱える悩み

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また、こうした「宿泊用」マンションが増える中、一般市民向けのマンションが不足しており、賃貸料が上昇。2015年には、賃料を23%も引き上げるマンションもあったという。

そこで、バルセロナ市は問題解決に乗り出したワケだが、これが問題含みだ。2015年にコラウ市長(43)は、「バルセロナをきれいな街に再生させる」と宣言し、今後1~2年間は、観光に関連した商業施設の開設や、建物の建設を認可しないと決定。たとえば、歴史地区では、観光客にも人気が高いバルセロナの大聖堂とその周辺地区では、バルやカフェテリア、自転車のレンタルショップ、24時間スーパーなどの開設が禁止されたわけである。

フォーシーズンズも撤退

さらに賛否両論となっているのが、新規ホテルの建設制限だ。すでにバルセロナでは、コラウ市長就任後、2015年7月から2017年7月まで新たなホテルの建設は抑えられていた。「観光都市戦略に沿う形でホテルの建設を進めたい」というのが理由だが、これに対してホテル業界は大反対。すでに38のホテル建設プロジェクトが中止となり、これにより30億ユーロ(3750億円)の投資と数千人の雇用が水の泡と化した。この中には、高級ホテル「フォーシーズンズ」も入っていたが、バルセロナ市長の決定が不服で撤退を決めたという。

ホテルの新設制限は今年7月には解除される見通しだが、それでも2年間もホテルを新設できなかった痛手は大きい。とりわけ、バルセロナが高級観光都市を目指すのであれば、フォーシーズンズを撤退させるのは得策ではなかった。

「観光客削減計画」で最も懸念されるのは、経済への影響だ。観光収入はバルセロナのGDPの14%を担うほか、12万人の雇用につながっており、同産業が後退することに関連業界は猛反発している。

バルセロナでは、2012年から5つ星ホテルに宿泊する場合は2ユーロ、4つ星が1.25ユーロ、それ以外のホテルで0.75ユーロ徴収しており、これによる同市の収入は年間約8600万ユーロ(108億円)に上った。また、2015年からガウディが手掛けたグエル公園も、入場料として7ユーロを徴収するようになっている。財政難にあえぐ自治体が多い中で、こうした収入は貴重な財源となっている。

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