バルセロナが「観光客削減」に踏み切る事情 世界屈指の観光都市が抱える悩み

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観光都市計画を秩序だったものにするという考えは決して間違ってはいない。しかし、ホテルや商業施設の開設を一時的に中断させるのは理解できるとしても、計画の中身を検討するのに1年以上要するというのは常識では考えられない長さである。何より観光客の拠点となるホテルが2年間も建設できないというのは大問題だ。

スペインにおいて観光業は極めて重要な産業で、GDPの12%を担っている。ほかに有望な産業がないことも理由かもしれないが、スペイン以外に観光業がGDPの10%以上に達する国はそう多くないだろう。それだけ高い観光のノウハウを持っているのである。その中でも、屈指の観光都市であるバルセロナが観光業に「後ろ向き」となれば、スペイン全体への影響も少なからず出てくるだろう。

バルセロナを悩ますもう1つの問題

観光問題とは別に、バルセロナの発展を遮りかねない問題もある。バルセロナが州都となっている、カタルーニャ州の独立問題だ。今のところ、独立支持派と反対派はほぼ半々に分かれているが、カタルーニャ政府も、バルセロナ市も独立を支持しており、中央政府との対立が生まれている。

仮にカタルーニャがスペインから独立すれば、欧州連合(EU)から離脱することを余儀なくさせられる。これはEUの単一市場から離脱するという意味で、このことからカタルーニャを去る企業が続出。2008年以降に撤退した企業の数から、進出した企業の数を差し引くと、2500社余りがカタルーニャから姿を消したことになる。撤退した企業のほとんどは、スペインのほかの地方に本社を移転させている。カタルーニャはEU加盟を希望しているが、加盟にはすべての加盟国の賛成が必要。これに、スペインが反対するのは明白だ。

一方、カタルーニャの抱えている問題をうまく利用しているのが、マドリードである。同市は、観光業の発展に力を入れているほか、カタルーニャに本社を置く企業のマドリードへの誘致を積極的に進めている。英国がEUから離脱することになって、ロンドンの金融市場の移転問題がささやかれているが、マドリードはフランクフルトやパリなどと同様に誘致に意欲を示している。

コラウ市長は、スペインでバブル景気が崩壊して、銀行ローンで家を購入した人が失業してローンの返済ができなくなり、購入した家を明け渡さねばならなくなったときに、それに抗議をする組織を作って有名になった人物だ。その人気を支えに政党を創設して、市民から支持を集めて市長になったのである。しかし、市民にとって観光客数の削減は経済面から見て得策とはいえない。より大局的なビジョンを持って、観光政策を考えることが求められる。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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