ナイキ「速く走れるマラソンシューズ」の衝撃

スポーツ用品の技術革新はどこまでOK?

先の五輪のメダリストが着用したナイキの「ズームヴェイパーフライ」は、6月に250ドル(約2万9000円)で発売される予定だ。フルマラソンで2時間の壁に挑戦するプロジェクト「ブレイキング2」で使用されるのは、そのカスタマイズモデル「ズームヴェイパーフライエリート」で、同社は「コンセプトカー」のようなモデルだとしている。

5月にイタリア・モンツァのオートレーシングトラックで実施する同プロジェクトのレースには、リオ五輪の男子マラソンの金メダリストであるケニアのエリウド・キプチョゲなど、ナイキがスポンサーとなっている東アフリカの3人のランナーが2時間切りに挑戦する。ただ、当日のレースは記録の公認条件のすべては満たさないだろうと同社は述べている。

このレースについては、信頼のおけるスポーツ競技というよりも、ナイキの宣伝もしくはマーケティング戦略だとの批判も一部からは上がっている。

レースでランナーたちは、個々に合わせて調整されたシューズを着用する。問題は、五輪やその他の主要なマラソンレースで使用されたシューズやそれらのニューモデルが、IAAFの基準を満たしているのかということだが、その基準そのものが不明瞭だ。

ブレードのようなソールを内蔵

ナイキのシューズは重量が約6.5オンス(約180グラム)で、厚いが軽量なミッドソールは従来のタイプよりも反発力が13%高いという。キプチョゲはそのクッション性が気に入っているといい、長距離を走った後の脚の痛みが軽減されたと話している。

ミッドソールには、薄くて硬いスプーンのような形状のカーボンファイバー(炭素繊維)のプレートが内蔵されている。別の表現をすれば、ブレードのようにカーブしているのだ。そのプレートはストライドごとにエネルギーをため、放ち、ランナーを前に押し出すパチンコのような働きをする。

ナイキによると、カーボンファイバーのプレートは同社の一般的なレース用シューズに比べ、特定のスピードで走るのに必要なエネルギーを4%削減するという。

南アフリカ・フリーステート大学の運動生理学者ロス・タッカーは、その数字が確かならば勾配が1~1.5%の下り坂を走るのに相当すると指摘する。「圧倒的な違いだ」とタッカーは言う。

シューズに関するIAAFの規則は以前から十分に整備されていない。IAAFの規則第143条では、シューズについて「使用者に不正な利益を与えるようないかなる技術的結合も含め、競技者に不正な付加的助力を与えるものであってはならない」としている。

しかし、「不正な利益」が何を指すのかは説明していない。

また「すべてのタイプの競技用靴は、IAAFによって承認されたものでなければならない」としている。しかしナイキは、正式な承認プロセスは把握しておらず、またシューズメーカー各社はIAAFに対して審査のために定期的にシューズを提出することはしていないと明かした。

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