ナイキ「速く走れるマラソンシューズ」の衝撃 スポーツ用品の技術革新はどこまでOK?
そして、いま新たに持ち上がっているのがシューズ問題だ。国際陸上競技連盟(IAAF)はニューヨーク・タイムズの取材に対し、さまざまな企業が新たに開発するシューズを一流のランナーたちが着用していることについて多くの問い合わせが寄せられているとメールで回答した。IAAFの技術委員会は近々会合を開き、「承認の変更もしくは見直しが必要かを検討する」予定だという。
ランナー全員の靴のチェックは不可能
ナイキのランニングフットウエア部門のシニアディレクター、ブレット・スクールミースターは「われわれは規定に則り、かつ公正にやっていると強い自信を持っている」と言う。
3月7日にナイキは、リオ五輪のメダリストらが着用したシューズをカスタマイズした新モデルを発表した。それは、フルマラソンで2時間切りを目指すという同社の大胆な(宣伝目的との批判もある)プロジェクトに参加するランナーが使用するものだ。
男子マラソンの世界記録を更新した最近の4人のランナーがそのシューズを着用していたアディダスも、大々的に報じられてはいないものの、現在の世界記録である2時間2分57秒を1時間台に縮めることに挑戦しており、それに向けた新しいモデルを発表している。
ニューヨークシティマラソンやその他50以上のレースを主催するニューヨークロードランナーズのジョージ・ヒルシュ会長は、トップレースから年齢別の大会に至るまで、すべてのレースが最新のシューズのテクノロジーの影響を受ける可能性があると言う。各レースの開始前に何十万人もの参加者全員のシューズをチェックすることは不可能だろうとヒルシュは指摘する。
「まさにゲームチェンジャーだ。シューズブランドが特許を取得し、そのシューズが市場に出回って広く普及した場合、皆がそのアドバンテージを享受できるなら、それは公平といえるのではないかと考えさせられる」
どんなシューズもランナーのパフォーマンスを向上させると考えられている。そうでなければ誰もが裸足で走るだろう。しかし、不公平な優位性にあたるのかどうかの境界線はどこなのか。その答えは誰も明確にはわかっていないようだ。