「経済成長は不可欠」という神話が国を滅ぼす チェコの奇才が教える成長より大事なもの

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経済も同じです。成長するのが当たり前というのは、経済学における神話です。数字で示されているわけでもないのに、成長神話ができてしまったのです。

いちばん大事なのは「自由」だ

安田:つまり、成長には反対しないけれども、人々が成長にとらわれ過ぎだと考えているのですね。

セドラチェク:成長に対して異常な執着がある。システム全体が成長で定義されています。私は旧共産主義国の出身ですが、わが国が共産主義・全体主義政権を捨てて資本主義を導入し始めていた頃に私が信じていて、今でも信じていることがあります。それは、民主資本主義の本質的な意義は「自由」にあるということです。

もちろん成長するに越したことはないけれども、成長は必ずしも必要ではない。成長は大事ですが最優先ではない。車でいえば最高速度のようなものです。重要かと聞かれれば答えはYESですが、最も重要かと聞かれればNOです。

脱共産化の革命の頃、私たちチェコの人間は、民主資本主義は成長に最も適した肥沃な土壌だと信じていたけれど、ここ20年間でこの関係は逆転し、今では、私たちは成長が市場経済民主主義の必須条件だと思い込むようになりました。私はそれを信じていません。間違った信念だと思います。

成長が市場経済民主主義の必須条件だとの説を信じるなら、資本主義は成長なくして維持できないことになる。だから、無理やりにでも成長し続けることが必要になってしまう。債務や銀行経営、その他いろんなものを犠牲にしてでもです。

それは、まさに現在、チェコがやっていることです。これではギリシャと同じ運命が待ち受けていることになります。実は、ギリシャは後れを取っていたわけではなく、誰よりも先を行っていて、他の国々よりも20年くらい早く破綻したにすぎない、ということになりかねません。

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