鴻海・郭会長が「サムスン潰し」に乗り出した 中国に巨大パネル工場作り、世界制覇へ一手

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過去、世界の液晶パネル産業は過度な投資の積み重ねによって、産業ならぬ”惨業”に陥った。鴻海傘下の群創は赤字が累積していった。その後、群創は奇美を合併し、世界第3位の液晶パネルメーカーになったものの、トップのサムスンの前では二軍に甘んじるしかなかった。

しかも、2008年のリーマンショックによる世界的な景気後退で、サムスンは外部からの液晶パネルの調達を全面的に停止し、自社製品の採用に切り替えた。さらにサムスンは、EU(欧州連合)の液晶パネルに関するカルテル調査で情報を提供し、これによって、鴻海の液晶事業は制裁金を科されてしまった。

群創の負債は2010年には3300億台湾ドル(約1.2兆円)にまで膨らんでいた。これは2016年に1400億台湾ドル(約5180億円)にまで縮小しているが、財務的なプレッシャー、サムスンからのプレッシャーは、重くのしかかったままだ。

それでも郭会長は液晶パネル事業への投資を大胆に追加した。2012年に堺ディスプレイプロダクトの経営権を獲得し、これによって世界で最も歩留まりが高く、最高品質で生産量が最大の第10世代工場を手に入れた。このとき、郭会長にとって、その意思を実現できるチャンスが訪れる。2016年4月にシャープに資本参加したことで、その構想はより明確なものとなった。堺ディスプレイプロダクトを急先鋒とし、液晶パネル事業を拡大して、サムスンを迎え撃つ――。

契約調印から起工式までわずか60日

工場建設地はサッカー競技場が200個分入る大きさだ(写真:超視堺科技)

郭会長は再び作戦実行におけるスピードの速さを見せつけた。広州市増城での工場建設は、契約調印から起工までわずか60日だった。それは3年後の世界1位を目指すためだ。製造業の高度化のために中国政府が打ち出した「中国製造(メイド・イン・チャイナ)2025」は、2025年の目標達成を目指している。だが郭会長は「われわれは2020年の目標達成を希望している。技術、生産量、効率、製品応用。すべて世界のトップだ」と語る。

堺ディスプレイプロダクトの技術と品質を後ろ盾とし、それを中国に移してコスト管理、政府補助を確保する。郭会長は、世界最大の生産量を持つ第10.5世代工場を開設し、生産能力と品質で、世界市場での主導権を取得し、サムスンを追い落とそうとしているのだ。

一方、成長著しい中国の京東方、華星光電(CSOT)については、積極的に生産能力拡大を進めているものの、業界関係者は歩留まりと品質で追いつかない可能性が高いと指摘している。これほどまで郭会長が積極的に世界第1位を追求するのは、成長を求められるプレッシャーがあるからだ。

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