うつ病で休職中、旅行に行くのはアリなのか 会社にバレたら問題になる?

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なお、仮に、休職中の旅行や趣味を理由として、会社(使用者)が不当な処分を行った場合、労働者は、その処分内容やそれによって受けた不利益の種類に応じて、法的手続により争うことができます。その場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

病気で休職中の給料や手当などの扱いですが、会社(使用者)が、休職中でも給与全額を支払ってくれる場合には、基本的には問題は生じないでしょう。問題は会社が休職中の給与を支払ってくれない場合です。この場合には、うつ病などの病気が「仕事が原因(業務上)」かどうかによって扱いが異なります。

病気で休職中の給料や手当などの扱いは、うつ病などの病気が「仕事が原因(業務上)」かどうかによって異なります。

まず、(1)「仕事が原因」で病気になった場合は「労災(業務災害)」にあたりますので、休業補償を受けることができます。具体的には、休業を始めて3日間は労働基準法にもとづき会社(使用者)から「休業補償」を、4日目以降については労災保険法にもとづき国から「休業補償給付」を受けることができます。

単に業務災害であるだけでなく、会社(使用者)の過失(義務違反)が原因で病気になった場合には、「休業補償」や「休業補償給付」などを超える休業損害や慰謝料などについて、会社などに対する損害賠償請求ができます。

また、(2)通勤途中の交通事故など、通勤災害が原因の病気でも、休業を始めて4日目以降は労災保険法にもとづく「休業給付」を受けることができます(支給の内容は「業務災害」と基本的に同じです)。

一方、(3)仕事が原因ではない病気(私傷病などと呼びます)は、就業規則や賃金規定に休職期間中の給料に関する取り決めがあれば、基本的にはそれに基づいた給料や手当を受けられます。そのような取り決めがなくても、社会保険に加入しているのであれば休業4日目以降に「傷病手当金」を受けられます。支給される期間は、支給開始から1年6カ月です。

休職の期間も「病気の原因」で変わる

労働者が取ることができる休職の期間ですが、この点についても、病気の原因が仕事上なのかどうかによって扱いが異なります。

(1)仕事が原因で病気になった場合には、仕事を休んで治療(療養)する必要があるなら、原則としてその病気が治るまで(「治ゆ」又は「症状固定」するまで)休職することができます。この期間中、会社(使用者)はその労働者を解雇することは法律上許されません(就業規則などで定めた休職期間を経過したとしても解雇や退職扱いができません)。

ただし、治療(療養)を開始して3年が経っても病気が治らない場合には、会社(使用者)は「打切補償」を行うことで、労働者を解雇できる場合があります。

一方、(2)通勤災害や(3)私傷病の場合には、法律上の明確な制限はありません。会社が就業規則などで定めた休職期間を超えて休業が長引くなどすると、本来要求されている勤務を全うできない、ということで解雇されてしまう可能性があります。

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