従業員への「罰金」はいったい何がマズいのか セブン加盟店とビッグモーターで問題浮上

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仮に合法であったとしても、労務管理として罰金制度は本当に必要なのだろうか。たとえば、遅刻を例に考えてみよう。会社としては従業員に遅刻してほしくないことは当然である。しかし、遅刻を防ぐための手段が、「罰金でペナルティを与える」ということで本当に遅刻問題に対する解決になるのだろうかということには一考を要する。

確かに、従業員も罰金を科されることは嫌なので、罰金による遅刻防止の一定の効果はあるだろう。しかし、罰金という「力」で押さえつけることで表面的な解決を図ったとしても、「なぜ従業員は遅刻をしたのか」という根本原因が解消されなければ、逆効果になってしまいかねない。

遅刻の理由が、前日深夜まで残業を余儀なくされ、気力・体力的に起床できなかったからかもしれない。あるいは、子供の体調が悪くて面倒を見ていたら家を出るのが遅れてしまったのかもしれない。会社の労働環境の現状や、従業員のワーク・ライフ・バランスのことを考えず、「遅刻=罰金」などとしてしまうと働きにくく、従業員に冷たい会社になってしまう。

罰金を科す前にすべきこと

罰金を科す前に、現状分析を行い、遅刻の原因が前夜の残業ならば、まずは残業削減に取り組むべきであるし、原因が子供の世話であれば、時差出勤、短時間勤務、フレックスタイム制など多様な働き方を認めていくなど、根本的に働きやすい職場環境を構築することが先であろう。

そこまで会社が配慮しても、私的な夜遊びとか、単なる怠慢で遅刻をする従業員に対しては罰金制度もやむをえないという順番で考えたい。

営業ノルマの未達に関しても、サボりで未達なのはともかく、能力不足による未達は、本人もどうすれば良いかわからず苦しんでいる訳なのだから、罰金で対応しても本人はますます追いつめられてしまうので、会社としては、再教育や配置転換で対応すべきであろう。

罰金制度を労務問題の解決策として安易に用いらせず、あくまでも「最後の手段」と考え、本質的なところで解決策・改善策を見つけ出していくことが、働きやすい職場環境を生み出し、ひいては中長期的な会社の競争力にもつながっていくはずだ。

榊 裕葵 社会保険労務士、CFP

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さかき ゆうき / Yuki Sakaki

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先の支援や執筆活動に従事している。

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