従業員への「罰金」はいったい何がマズいのか セブン加盟店とビッグモーターで問題浮上
第4の条件は、罰金の額が法律で定められた上限を超えてはならないということである。
労働基準法第91条の「1回の~」以下の部分をかみ砕いて説明すると、「1回の罰金の額は、1日の賃金の半額を超えてはならず」かつ「1カ月の罰金のトータルは、月の本来の賃金の1割を超えてはならない」という意味である。
具体的に言えば、日給1万円で月に20日働く人は、1日の罰金の上限は5000円まで、1カ月の罰金の上限は2万円までということである。
この上限を超えた罰金制度は、たとえ目的が企業秩序の維持であったとしても、違法な罰金制度ということになる。
「行為」と「罰金」のバランス
第5の条件は、就業規則に定められた「行為」と「罰金」のバランスが、民法第90条の「公序良俗」などに反せず、社会通念上相当であるということである。
たとえば、「遅刻を1分でもしたら、日給の半額を罰金として減給する」という就業規則の定めは、形式的には労働基準法第91条を満たしているが、実質的に考えると、行為に対してあまりにも罰金が重すぎるということで、違法となる可能性が高い。
また、「社長にあいさつをしなかったら、罰金100円とする」という定めをした場合は、罰金の金額的には小さいかもしれないが、そもそも「社長にあいさつをしなかった」ということが合法な罰金の事由となりうるかは非常に疑わしいであろう。
ここまで述べてきた5つの条件を満たして、初めて社内の罰金制度は合法となる。
以上を踏まえ、実際にニュースで報道された罰金の問題について検証を行ってみたい。
まずは、名古屋のセブン-イレブン加盟店の事例である。
この加盟店オーナーは、アルバイトに対して「急に欠勤したら1回1万円の罰金を徴収する」という内容の書類に署名させ、このうち1人には、3回の遅刻を理由に計3万円を払わせたとされている。罰金を科した目的は、「急に休まれると経営者が穴埋めせねばならず、自由な時間を確保したかったから」と報じられている。
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