ドコモ、インド「完全撤退」への遠い道のり 1300億円の受け取りでタタと合意したが…
2014年4月に開催した取締役会で、ドコモはこのオプションの行使を決議。同7月、サンズに売却先の仲介を申し出た。ところが、いつになってもサンズは買い手を連れてこない。そこでドコモはロンドン国際仲裁裁判所に仲裁を申し立てた。2015年1月のことである。
同裁判所は、「株主間協定の義務不履行があった」とサンズが売却先探しをしないことを問題視。翌2016年6月、ドコモへ11.8億ドルの損害賠償をするようにサンズに命じた。しかし、サンズがこれを拒否。ドコモはタタ・グループの資産差し押さえに入るなど泥仕合の様相となった。
流れが変わったのは昨年10月だ。強硬姿勢を崩さなかったサンズのサイラス・ミストリー会長が解任され、創業一族で前会長のラタン・タタ氏が暫定会長に就くと、紛争解決に大きく動き出したとされる。ただ、今回のドコモとサンズとの合意だけでは、決着にはほど遠そうだ。最終的な決着には、超えなければならないハードルがある。
「良好な日印関係のシンボル」はポーズ?
まずはデリー高等裁判所がどんな判断を下すか、である。サンズがドコモに賠償金を支払うことをインドの司法当局が認めるかが焦点だ。同裁判所が認めたとしてもまだハードルがある。インドの中央銀行に当たるインド準備銀行は「プット・オプションの行使を認めない」とし、そのことがサンズの態度を硬化させてきた面があるからだ。
ドコモは総額2667億円で取得したTTSL株の減損をたびたび実施。2014年に448億円まで減損、さらに2016年にはついに全額減損している。賠償金が全額入金されれば1300億円の営業外収益が発生する可能性があるが、裁判所や中央銀行の判断次第、という面は依然として残る。
ちなみに、今回のドコモのリリースには「デリー高等裁判所により(ロンドン仲裁裁判所の)仲裁裁定の実現が認められた際、ドコモは、タタ・サンズとの新たな協調体制のもと、回収された資金をインドにおける産業の発展のために活用することを検討してまいります」とあり、「サンズとの新たな協調体制が、良好な日印経済関係のシンボルとなることを期待している」とまで書いている。
「巨額の賠償金を得てもインド国内に投資する」というメッセージともとれるが、これはおそらく、巨額資金の国外流出を問題視してきたとされるインド準備銀行へのポーズに違いない。ドコモが撤退を決定してからすでに3年が経過する中、インドの規制当局にこの文言がどう響くのか。決着に向けて進んではいるものの、予断を許さない状況だ。
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