ベテラン弁護士が「相続で争うな」というワケ 「カネと引き替えに失うもの」が大きすぎる
それから、数年後、依頼者からこんな話を聞くことになります。
「あの後すぐ、伯母は亡くなりました。もういい歳でしたからね。あんな出来事があって、伯母の家とはろくに付き合いもなくなっていましたが、ついこの間、急に伯母の長男(依頼者のいとこ)が電話をよこしてきたんです。
話を聞くと、金を貸してくれということやった。どうやら、長男は会社のカネに手を付けたらしく、会社から『カネを返せ。できんのやったら訴える』と言われたらしいんです。
よくも図々しく、ワシに頼めたもんやと呆れましたわ。借金の申し込みなんか、もちろん、断りました」
つまりこのケースでは、依頼者の伯母が目先の利益ばかりを追い求めた結果、自分の子供のピンチを助けるはずだった親戚を失ってしまったともいえるでしょう。
遺産相続での争いから運が悪くなり、その不運が子供にまで祟(たた)ったわけです。
兄の条件をのんだ弟に訪れた幸運
逆にこんなケースもありました。
父親の経営する会社を手伝っていた兄弟がいました。お兄さんは専務を務め、弟は同じ会社で常務として働いていたのです。
ある日、突然、経営者であるお父さんが病気で亡くなってしまいました。
均等相続の時代ですから、本来、相続にあたってはお兄さんと弟さんと平等の権利があります。
でも、お兄さんは、会社を継ぎ経営していくにあたっては、多くの資金が必要だから、相続の割合を、自分が多くなるよう変更してほしいと弟さんに頼んだのです。
もし弟が、それに同意せず、裁判に持ち込めば、2分の1の権利があるから、より多くの遺産を相続できたでしょう。
それなのに弟さんは、お兄さんのいう条件をそのままのみました。お兄さんと争いたくなかったことと、お父さんが遺した会社をもっと大きくしたいという気持ちがあったからです。
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