あのジャストシステムが大変貌を遂げていた 今や収益柱は「一太郎」「ATOK」ではない

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とはいえ、好業績を謳歌する現在に至るまでは数々の苦難があった。まず1990年代後半には、当時圧倒的なシェアを握っていた「一太郎」が、米マイクロソフト社の文書ソフト「Word」との激しい競争に巻き込まれた。

そして、2000年代半ば以降は多額の研究開発資金を投入したXML文書の作成・編集技術「xfy」が普及せず、海外事業が不振に陥ったこともあり、資金繰りに苦しんで財務制限条項に抵触するまでに追い込まれた。

キーエンスが救済出資してから大きく変化

そこに救いの手を差し伸べたのが、FA(ファクトリーオートメーション)センサーなど計測制御機器大手のキーエンスだった。2009年4月にジャストシステムの約45億円の第三者割当増資を引き受け、44%出資の筆頭株主に浮上。過半数の取締役を送り込み、不採算事業からの撤退など、抜本的なリストラ策に取り組んだ。

リストラと同時に新規事業の立ち上げも行った。好調な業績を担う小中学生向け通信教育事業も、キーエンス出資後に立ち上げた新規事業だ。2010年度以降に増収増益を続けてきているのは、ジャストシステムが創業時から培ってきた技術力に加えて、このような「キーエンス流改革」があったからにほかならない。

「世の中の定石や固定観念にとらわれることなく、常に変化を意識することが、成長を継続させることに繋がる」

2016年3月に38歳にして経営トップに就任したキーエンス出身の関灘社長は、自社ホームページ上でこのような経営理念を語る。キーエンスが出資した2009年に取締役として送り込まれた関灘社長。当時、同じタイミングで新社長に就任したジャストシステムの生え抜きである福良伴昭氏の下で、経営改革の一翼を担ってきた。

関灘社長の言葉のとおり、ジャストシステムは文書ソフトやオンライン通信教育にとどまらず、毎年のように既存技術を展開した新製品を積極的に投入している。2016年には営業支援のクラウド型サービスを開始。2017年秋には、電子カルテや複数の部署のデータを統合し「全文検索」や「データ分析」が可能な、医療機関向けのデータマネジメントシステムを投入する予定だ。2月に発売した「ATOK」の新製品でもディープラーニングを取り入れた新変換エンジンを採用するなど、技術革新に余念がない。

しかし、名簿流出問題で因縁のあるベネッセコーポレーションがタブレット型の小学生向け通信教育「チャレンジタッチ」に力を入れてきていることなど、これまでの好調な業績を牽引してきた「スマイルゼミ」を取り巻く競争環境は激化している。ジャストシステムは、「キーエンス流経営」で高い成長を継続することができるのか。今後も関灘社長の手腕が問われることになる。

島 大輔 『会社四季報プロ500』編集長

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しま だいすけ / Daisuke Shima

慶応義塾大学大学院政策メディア研究科修士課程修了。総合電機メーカー、生活実用系出版社に勤務後、2006年に東洋経済新報社に入社。書籍編集部、『週刊東洋経済』編集部、会社四季報オンライン編集部を経て2017年10月から『会社四季報』編集部に所属。2021年4月より『会社四季報プロ500』編集長。

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