結局、「速読で勉強」は本当にできる事なのか 速読・記憶術の実践家と試験のプロが対面

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鬼頭「引っ掛かり」ですか。

宇都出はい、わからないところを飛ばし読みするのは大事ですが、少しでも引っ掛かるところを増やさないと、理解・記憶が進みません。そのためにも「問いを立てる」のが大事です。ただ新たな分野のストックがないと問いの立てようもないので、試験勉強の場合、私はとにかく過去問やテキストの目次を見て、意味がわからなくても単語を覚えるようにします。

たとえば行政書士であれば、全然意味はわからなくても「行政序論」とかの単語を覚えます。次にテキストを読んだら、「行政序論」という言葉が目に入ります。

「単語を覚えるなどして、なじみのある言葉を増やすことで『問いを立て』、『引っ掛ける』ことが大事」と話す宇都出氏(右)(撮影:今井康一)

言葉が自分になじんでいると、その言葉はすんなり入ってきます。言葉を覚えていると、繰り返すという作業ができるようになります。そして繰り返すと、さらに深く覚えられます。

このようにだんだんストックを広めていくと、読める範囲が増えていきます。ささいな引っ掛かりではありますが、まったく知識がないものをいきなり読むとなると字面だけを追う作業になってしまい、読む気も起こりにくくなります。

鬼頭それわかります。もともと知識があるものであれば、その知識をつなげる作業なのでなんとか頭に入ってきますが、ギリシャ神話を今読めと言われてもきついものがあります。ちなみに記憶法にも何か工夫はあるのでしょうか。

宇都出私はイメージ記憶を活用します。たとえば、「行政序論」の「じょ」に引っ掛けて叙々苑の焼肉とか。あとは場所法という記憶法を活用して、場所に結び付けて単語を覚えるとかですね。

鬼頭私も「最悪、理解できない時は、語呂合わせを使え」とよく言います。たとえば毎年変わる数字であるとか、合理的な理由がないものですね。

「丸暗記」と「理解」の関係を整理する

宇都出これらの丸暗記はピンポイントに活用できます、引っ掛かりを作るための目次や、どうしても覚えられない数字とかに有効です。でもこれらは理解が伴っていないので、情報量が多い試験の全範囲になると使えません。結局、最終的には「理解」というのが最高の記憶術です。ざっくり読んで、ストックをためて、問いを立てながら繰り返していく。これこそいろいろなことを結び付けながら理解し記憶していけるいちばんスムーズな方法です。

鬼頭結局は記憶があるから理解しやすいということですね。

宇都出そもそも人間には一時的な記憶ができる、ワーキングメモリと呼ばれる機能があります。たとえば、鬼頭さんは今私が話したことを一時的に記憶しているから、次の話に結び付けることができるわけです。でもこのワーキングメモリって実は容量がとても小さくて、そんなにたくさんのことは覚えられません。なじみのない単語は、このワーキングメモリを圧迫します。鬼頭さんであれば、弁護士なので法律関係の話はスムーズにできますが、全然知らない理系の話で専門用語が出てきたら話についていけないのではないでしょうか。

鬼頭そうですね、ワーッとなってしまいますね。

宇都出それはワーキングメモリが圧迫されているんです。でもなじんでる単語だったら、たとえ意味はわからなくても「あっ、あれね」と入ってきて、自分の既存の記憶と結び付きを始めます。そうすると、ワーキングメモリが圧迫されません。読書であれば、他の文章を読む余裕が出てきます。なのでテキストの専門用語でウッてきたときなんかは特に、ワーキングメモリがすでに一杯なので、そこでじっくり読んで理解しようとしても報われないことが多いので、注意が必要です。さらに、理解ができないから、とにかく覚えてしまえと丸暗記に走るのはもっと危険です。ワーキングメモリがフリーズ(一時停止)するだけです。

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