コストコが日本で成功できた本当の理由 失敗したカルフールとの差はどこにあるか

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欧州のハイパーマーケットであるカルフールであったが、日本進出に際しては、日本人がフランスに対して抱く「おしゃれで高級」なイメージが結果的に災いとなった。

もともとはローコスト・オペレーションで低価格販売が強みであり、海外展開においても「フランスらしさ」を打ち出す展開は行っていなかったのに対し、カルフールでは日本展開に当たっては、例外的に日本人が求める「フランスらしさ」に自らをポジショニングする展開を余儀なくされた。

日本の消費者が求める「フランスらしさ」とカルフールが本来もつ「カルフールらしさ」で大きなギャップが生まれてしまったこと、フランスの日常を消費者に届けるべきところを日本人がフランスにイメージする高級感に縛られ本来の自分らしさが表現できなかったことが致命的であったと言えるだろう。

コストコは「米国らしい」非日常感を提供

これに対して日本の総合スーパー(GMS)にはなかった、日本の消費者が抱く「米国らしさ」を自社の強みともマッチングさせながら提供したのがコストコなのだ。

「倉庫店」と命名されたコストコの店舗は、面積も広く天井高で、広い通路に大きなカート、1坪1アイテムを基本とするインストアプロモーションは単品のフェースが大きく、「米国らしい」非日常感を日本の消費者に提供している。

もともと本拠地である北米大陸においても「劇場型ショッピング」を標榜するコストコの倉庫型店舗が、国土の狭い島国である日本において、圧倒的な「米国らしさ」を提供したのだ。

また日本においてイトーヨーカドーやイオンなどのGMSは近年低収益に喘いでいるものの、いざ競合から見ると、国内では圧倒的なプレゼンスを誇っているGMSに対していかに差別化を図ることができるのかが競争戦略上最重要ポイントとなる。

このようななかで、GMSに対して消費者に違いを見せることのできなかったカルフールと、品揃え・価格・店舗の魅力・会員制というビジネスモデルなどで明快にその違いを見せつけたコストコで大きく明暗が分かれたことは必然的だったと言えよう。

あなたの会社の「らしさ」とは何だろうか。そして、それはきちんと顧客に伝わっているだろうか。

「ニューズウィーク日本版」ウェブ編集部

世界のニュースを独自の切り口で伝える週刊誌『ニューズウィーク日本版』は毎週火曜日発売、そのオフィシャルサイトである「ニューズウィーク日本版サイト」は毎日、国際ニュースとビジネス・カルチャー情報を発信している。CCCメディアハウスが運営。

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田中 道昭 立教大学ビジネススクール教授
たなか みちあき / Michiaki Tanaka

シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)などを経て、現在は株式会社マージングポイント代表取締役社長。主な著書に『「ミッション」は武器になる』(NHK出版新書)、『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)、『GAFA×BATH 米中メガテック企業の競争戦略』(日本経済新聞出版社)など。

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