コストコが日本で成功できた本当の理由 失敗したカルフールとの差はどこにあるか

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衣食住全てを取り扱う郊外立地の大規模総合スーパーであり、欧州においてハイパーマーケットと呼ばれる業態に分類されるカルフールは、商品のアイテム数が7万点にも及ぶ広範囲な商品構成を誇っている一方で、その調達構造は現地国調達を基本としていることが特徴だ。

同社のアニュアルレポートによると、特に食品の現地国調達比率は総じて高く、アジア諸国においては、インドネシア:99%、マレーシア:100%と高水準となっている。

メーカーとの直接取引を実現できなかったカルフール

すなわち、カルフールの進出国における最大の成功要因は極めてシンプルかつ明快であり、「進出国における消費者に対してハイパーマーケットとして低価格で商品を提供できる競争力を確保するために、いかに短期のうちに現地メーカーとの直接取引体制を構築し、規模の経済を高めていけるか」という点に集約されるのである。

このようななかで、カルフールは日本進出に際してメーカーとの直接取引を画策したものの、大手メーカーから相次いで拒否され、間接取引を余儀なくされたことが、収益構造に直結する商品の調達構造に大きな打撃を与えた。

すなわち、カルフールは、自社が得意としてきた最適な「商品の品揃構造×商品の調達構造」構築に日本では失敗し、消費者に対して低価格で商品を提供する事業構造と収益構造を作り上げることができなかったのだ。

ハイパーマーケットであるカルフールの収益構造上の成功モデルは、売上を100としたとき、売上原価率を75~80%程度におさえて20~25%程度の粗利益率を確保、販売管理費率を20%程度におさえて5%程度の営業利益率を確保するというものだ。

この成功モデルに対して、日本進出後のカルフールは、メーカーとの直接取引が実現できず売上原価が高止まりする一方で、進出後に余分に必要となる販売管理費も重くのしかかり、営業赤字から脱却できなかったものと推測される。

それでは、コストコの「商品の品揃構造×商品調達構造」はどのようになっているのであろうか。

コストコのアイテム数は、ハイパーマーケットであるカルフールの7万点に対して4000点となっている。

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