こうした動きに対して、各国政府も黙ってはいない。東洋経済オンラインの本連載記事「パナマ文書で人為的な課税逃れは防げるか」でも詳述したように、国際的な課税逃れを防ごうとさまざまな対応策を講じている。
それでも、課税逃れがいたちごっこのように起きるのは、税率設定という国家主権を、各国政府が相互に侵すことにためらいがあるからだ。何に税を課すかということは共通化しても、税率は各国それぞれの事情で自由に決められる、となると、多国籍企業が低税率国へ拠点を移す動きは止まらない。
よくよく考えれば、源泉地主義を取っているからこうした課税逃れが起きるのだし、源泉地主義で課税しなければならないという必然性はない。財政学者はこれまでにも法人課税のあり方について議論を重ねていて、その中で出てきたアイデアが仕向地主義課税である。
源泉地主義から仕向地主義に変える
仕向地主義課税のアイデアのヒントは、消費税(付加価値税)である。消費税は、仕向地主義課税の最たるものである。つまり企業が生み出した付加価値には最終消費地(仕向地)で消費者に負担してもらう形で課税する。フランスで生まれた付加価値税(VAT)は、企業が商品を生産した土地で課税することが主ではない。流通過程でも課税されるが、その税負担は最終的には消費者に転嫁され、消費者が負担することを想定している。
したがって、最終消費地でない国(源泉地)から最終消費地の国(仕向地)へ輸出する際には、源泉地で払った付加価値税は輸出する直前の段階で税務当局から還付される。この輸出免税は付加価値税の国際共通ルールとなっており、WTO(世界貿易機関)協定でも認められている。その代わり、最終消費地の国で外国から輸入した際には、その商品価格に丸ごと(仕入税額控除はなく)課税される(輸入品は課税対象)。輸出免税があるから、最終消費地では国産品も輸入品も付加価値税による不公平は生じない。
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