他方、キャッシュフローを課税ベースとするというのは、現金の流出と流入の差に対して課税することである。加えて、前述のように仕向地主義の原則を取り入れる。つまり、輸入した仕入れ品は課税対象とし、輸出による売り上げは課税対象から外す。したがって、
が課税ベースとなる。減価償却費は、仮定計算に基づく費用で現金の支出はないことから課税上の費用とは認めない代わりに、設備投資は現金の支出を伴うものとして控除する。また、支払利子の控除は認めないこととする。こうした課税ベースの変更を、下院共和党は提案した。
そこで、付加価値税の課税ベースと比較しよう。付加価値税の課税ベースは、売り上げから仕入れを控除したもの、つまり粗付加価値である。ただし、設備投資は課税対象とはならない。これに、前述のように輸出免税があるとともに輸入品は課税対象となる。したがって、
となる。
結果は「消費税の導入・法人税の廃止」と同じこと
比較すれば一目瞭然だが、仕向地主義キャッシュフロー課税は、付加価値税と課税ベースが似ている。人件費を差し引くか否かだけの違いでしかない。源泉地主義・法人所得課税だと、付加価値税とは課税ベースがかなり異なる。
もし米国の法人税が、源泉地主義を放棄して仕向地主義に変え、課税ベースをキャッシュフローに切り替えれば、付加価値税のない米国が、付加価値税を導入するも同然の変更となる。加えて、既存の源泉地主義・法人所得課税をやめるわけだから、日本や欧州諸国が課している「法人税」を廃止するも同然である。
トランプ大統領は「国境税調整」と保護主義的に発言しているかのように見えるが、下院共和党案をそのまま採択したならば、事実上、米国で消費税(付加価値税)を導入して法人税を廃止するという革命を行うことになるのである。
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