これにより、最終消費者に対して同じ品物を同じ税抜き価格で販売するかぎり、国産品も輸入品も付加価値税によって有利不利は生じない。国によって付加価値税率が異なることはここには影響しない。しかし、源泉地主義・法人所得課税の下では、最終消費者に対して同じ税抜き価格で販売しようにも、商品を生産した国(源泉地)で重い税を課されればそれだけ企業にとって不利になる。付加価値税では国産品も輸入品も有利不利は生じないのに対し、源泉地主義・法人所得課税では、より高い税率で課税される国で生産された商品が不利になる。
ひるがえって、米国には付加価値税はない。これは、連邦政府と州政府の課税権争いの結果で、州政府が小売売上税(小売り段階でしか課税しない)を課税していることから、連邦政府が州をまたいで付加価値税を課税できないことによる。他方、日本、カナダ、欧州諸国は付加価値税を課税しており、輸出免税を実施している。米国には付加価値税がないからこうした措置はない。
トランプ大統領は、米国に輸出する国が輸出免税をしているのは不公平、との趣旨の発言をして、これに対抗すべく、国境税調整を検討するとしている。こう見ればわかるように、法人税で国境税調整をすることは、まさに法人税を仕向地主義に変えることにほかならない。
課税対象をキャッシュフローにするとどうなるか
これに加えて、課税対象を法人所得からキャッシュフローに変えることも、下院共和党案には盛り込まれている。企業の売り上げから仕入れを差し引いた粗付加価値は、人件費や支払利子、減価償却に充てられ、その残りが利益(大まかにいえば法人所得)となる。
これを踏まえると、法人所得に課税する対象は、結局、
であることがわかる。
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