トランプ大統領の狙いは米国の法人税廃止?! 「国境税調整」の本質は保護貿易より凄い

✎ 1〜 ✎ 74 ✎ 75 ✎ 76 ✎ 最新
拡大
縮小

これにより、最終消費者に対して同じ品物を同じ税抜き価格で販売するかぎり、国産品も輸入品も付加価値税によって有利不利は生じない。国によって付加価値税率が異なることはここには影響しない。しかし、源泉地主義・法人所得課税の下では、最終消費者に対して同じ税抜き価格で販売しようにも、商品を生産した国(源泉地)で重い税を課されればそれだけ企業にとって不利になる。付加価値税では国産品も輸入品も有利不利は生じないのに対し、源泉地主義・法人所得課税では、より高い税率で課税される国で生産された商品が不利になる。

ひるがえって、米国には付加価値税はない。これは、連邦政府と州政府の課税権争いの結果で、州政府が小売売上税(小売り段階でしか課税しない)を課税していることから、連邦政府が州をまたいで付加価値税を課税できないことによる。他方、日本、カナダ、欧州諸国は付加価値税を課税しており、輸出免税を実施している。米国には付加価値税がないからこうした措置はない。

トランプ大統領は、米国に輸出する国が輸出免税をしているのは不公平、との趣旨の発言をして、これに対抗すべく、国境税調整を検討するとしている。こう見ればわかるように、法人税で国境税調整をすることは、まさに法人税を仕向地主義に変えることにほかならない。

課税対象をキャッシュフローにするとどうなるか

これに加えて、課税対象を法人所得からキャッシュフローに変えることも、下院共和党案には盛り込まれている。企業の売り上げから仕入れを差し引いた粗付加価値は、人件費や支払利子、減価償却に充てられ、その残りが利益(大まかにいえば法人所得)となる。

粗付加価値=人件費+支払利子等+減価償却費+利益

これを踏まえると、法人所得に課税する対象は、結局、

利益=粗付加価値-人件費-支払利子等-減価償却費

であることがわかる。

次ページ改革の本質的な効果
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT