これは清花さんのような「ベビーカーに反対する人に共感」の4.2%、沙織さんのような「不快に思う」の9.3%を大きく上回っています。賛成、反対のどちらかの立場に立つ、というよりは、お母さんたちの切実な訴えが調査結果にも反映された、ということでしょうか。
ただ、ベビーカーを使用しないことが困難な場面もあります。同調査では、持病(腰痛など)で抱っこひもを利用できない、仕事や空港、病院など、子連れで出掛けざるをえない場所で、やむにやまれずベビーカーを利用しているといった意見も集まりました。
1歳5カ月の娘さんを育てているあかりさん(仮名・25歳)も、こう考えるひとりです。現在あかりさんは、2人目を妊娠中。ベビーカーを使うと迷惑になる場面があることを理解しながらも、「私のように妊娠中だと、抱っこひもは使えないんです。子どもが歩ける年齢ならいいのですが、まだ自分で歩けないので……」と、ジレンマを抱えています。
「周囲に迷惑」の自覚はあっても、仕方がない
「小さな子どもがいるからって、公共交通機関を利用しないわけにはいきません。周囲に迷惑をかけている自覚があったとしても、ベビーカーでバスや電車に乗らざるをえない事情があることをわかってもらいたいのです」(同)
「ベビーカーの利用実態調査結果を見て、世間のお母さんたちが『周りから親切にしてほしい』『もっと構ってほしい』と思っているんだな、と感じました。これは、世の中から冷たくされすぎて、へこんでいることの裏返しではないでしょうか」。そう指摘するのは、一部在宅ワークをしながら4カ月の娘を育てる葵さん(仮名・28歳)。「日本の社会は、ベビーカーを使う母親に対してのみならず、自分より弱い対象に牙をむくことでストレスを発散させているような傾向がある。でも、そんな世の中は貧しい」(同)
葵さんも、日頃から肩身の狭い思いをしています。「ベビーカーを押して郵便局のスロープを使おうとしたとき、向こうから来た年配の女性から『どけ』という無言のプレッシャーを感じて嫌でした。けれども私は何も言わずに我慢しました。ヘタに声を上げたら、何をされるかわからないからです。文句を言いたいときもあるけれど、我慢します。声を上げればこちらが『あの人、うるさいな』と、白い目で見られるだけだからです」(同)
「母親だって、何も誰かを邪魔しようとしてベビーカーを使っているのではなく、必要で、使うしかないから使っています。そのあたりは誰もが理解すべきことなのでは?」(同)
今回の取材からは、お母さんたちも公共の場でベビーカーが邪魔になることを自覚しながらも、必要があって使っていることを理解してほしいと思っていることがわかりました。そして、「大変だから」とわが物顔で他人を配慮しない母親には、違和感を抱いている人もいます。
特に心に残ったのは、沙織さんのお話の中にあった「社会全体でする子育て」という考え方です。この考え方がもう少し広まれば、ベビーカーを使う人も使わない人も、お互いに不快な思いをせずに済み、気持ちよく生活が送れるのではないでしょうか。
私も、子どもが小さい頃は、ただでさえ荷物が多い中、抱っこしたり、ベビーカーで階段をのぼったりしているときに、親切な人の助けをありがたく思ったものです。「お互い様」の精神で、私も誰かの助けになりたいと思うことができました。
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