一方、ベビーカーが批判されること自体に違和感を感じているのが、アメリカ在住経験もある専業主婦の沙織さん(仮名・37歳)。3歳と1歳の娘さんがいますが、保育園激戦区で知られる世田谷区在住ゆえ、現在は待機児童状態で子育てをしています。
数年前まで夫の海外赴任に同行していた沙織さんは、アメリカと日本の子育てに対する社会の見方の違いに、驚きを隠せません。「なんでベビーカーを押すことが批判されるのでしょう。はっきりいって不快です。1人目を出産したアメリカでは、社会全体が子育てに対してウエルカムな雰囲気でした。だから、社会の宝を授かり、育てているという充実感があったのです」(同)
日本は「子育て中=ご迷惑をかけている」という雰囲気
「しかし帰国すると急に『子育て中=ご迷惑をかけている』という雰囲気。大きなギャップを感じます。女性の活躍推進、などと言っている割には、子どもを邪魔者にしているような風潮が、特に東京では強いのではないかと思っていいます。
ベビーカーを押して街を歩いていると、ことさら世間の冷たさを感じます。子育てを経験した年配の女性たちは、席を譲ってくれたり、ベビーカーを動かすので手伝ってくれたりしますが、特に年配の男性は『見て見ぬふり』が多い。嫌な思いをしたくないので、なるべく公共交通機関には乗らないようにしています」(同)
沙織さんは、ベビーカー論争とは、日本社会の深いところに根付く「モノの考え方」の一端が、表面化している事象にすぎないのではないか、と指摘します。「国が法律を整え、育休を取る男性が増えているとはいっても、それはあくまで『制度』を整えてそうなっているのであって、人々の『マインド』はついていっていない。今のままでは、社会で子育てをするという風潮にはならず、子育てするお母さんが孤立化してしまうのでは」(同)
とはいえ、ママたちの「ベビーカー論争」への思いは、反対者への共感でも反感でもなく、複雑なもの。
先に挙げたベビーカーの「利用実態調査」によると、最も多かった答えが「事情を理解し、優しく接してほしい」の61.6%でした。
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