ANA、メキシコ新路線に「トランプリスク」の影 「史上最長」の路線には試練が待ち受ける

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ANAはこの路線のために、B787-8用の新型エンジンを調達した。飛行距離が長いことに加え、メキシコシティのベニート・フアレス国際空港は標高約2300メートルに位置しており通常よりも酸素が薄い。そのためANAが保有するB787-8機の従来型エンジンではメキシコシティ離陸時の燃焼効率が低下してしまい、客数や貨物量に制限がかかるため運航採算が取れなかった。

新型エンジンでも、偏西風の向かい風が強い冬場は乗客数を制限しなければならない。本来であれば169席だが、就航当初の2月はエコノミークラスの一部を減らした146席での運航となる。「基本的には単価の高いビジネス客が多いため影響は少ない」(ANA広報)というが、1割以上の座席減は痛い。

メキシコでの乗り継ぎはANAが不利

メキシコシティ国際空港第2ターミナルにあるアエロメヒコ航空のチェックインカウンター。現地の地上職員の顧客対応には課題が多い(記者撮影)

また、現地での乗り継ぎは大きな課題だ。外務省によればメキシコに進出する日系企業の8割はメキシコシティ以外の地域にある。それだけ乗り継ぎ需要は高い。

アエロメヒコ航空と現地のLCC(格安航空会社)インテルジェットとは、乗り継ぎ便も含めた航空券を買える契約を結んだ。たとえばANAのウェブサイトからアエロメヒコやインテルジェットの乗り継ぎ便もまとめて買える。成田で預けた荷物は最終目的地までそのまま運ばれるという。

だが、ANAが属する航空連合「スターアライアンス」にはメキシコの国内線を運航する航空会社がなく、米国のパートナーであるユナイテッド航空のように共同運航やダイヤ調整のできる提携相手がいない。そのため、乗り継ぎ時間が長くなるケースがある。また、アエロメヒコは別の航空連合「スカイチーム」に属しておりターミナルが異なる。乗り継ぐ場合は電車で移動しなければならない。

これはANA側も認識していることで、「メキシコシティ以外に行くビジネス客は、米国のヒューストンから乗り継ぐことが多くなるだろう」(広報)。ヒューストンでは荷物を預けたまま、ユナイテッド航空がメキシコ7都市に飛ばす便におおむね2時間以内に乗り継げる。

現に成田―メキシコシティ線の予約客の4分の3は、メキシコシティで降りる。この路線で安定した収益を上げるには、乗り継ぎ客の取り込みが必要だろう。ただヒューストンのような仕組みを作れなければ容易ではない。

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